実行すべき4つのこと

 これら3つの成長への道筋は、2009年の著書The Silver Lining(未訳)の中でも言及した調査によって明らかになったものだ。「希望の兆し」を意味する同書のタイトルは、前述したような好機を意味するだけではない。景気後退に伴うリソース不足は、イノベーターに対して「すでに実行されているべきこと」を実行するように迫るという事実を指している。

 ●慎重に「剪定」する

 自社のイノベーションポートフォリオを綿密に検証する。それらのうち、少なくとも50%を廃止することだ。自社のリソースは、最大のインパクトを出せる領域に集中させる必要がある。

 廃止するプロジェクトの多くは、のろのろと足を引きずって歩き、自社のイノベーションの活力を吸い取る「ゾンビ」のような案件である可能性が高い。ゾンビは殺すべきだ。殺したからといって、後悔する必要はまったくない。なぜなら、すでに実行されているべきことであり、いま実行しなくてはならないからだ。

 ●コスト削減に向けて機能を改める

 コスト削減の取り組みでは、顧客中心主義を中核にしなくてはならない。結局のところ、より少ないリソースでより多くを実現するには、まず「より多く」の意味を定義できなくてはならない。つまり、顧客、従業員、ステークホルダー、チャネルパートナーの「片づけるべき仕事」を明確にするということだ。

 ●優れた戦略的実験をマスターする

 実験は、かつてなく容易に行えるようになった。そのため、適切な手順に従って実験を行うことが、ますます重要になっている。

 優れた科学者と同じように、まずは仮説から始める。明確な目的を持って、実験を設計する。何が起きるかを考え、予測を立てる。その予測を測定・検証できる形で、実験計画を実行する。確実な答えが出ることはけっしてないが、「HOPE」(希望)を忘れずにいよう(hypothesis=仮説、objective=目的、prediction=予測、execution plan=計画実行の頭字語)。

 ●イノベーションの負荷を分担する

 成功する起業家はリスクを取るものと、人々は考える。それは正しくない。成功する起業家は、リスクを可能な限り広く分担させることで、リスクを賢く「管理」するのだ。企業はいまや、これまで以上にオープンイノベーションを採用し、賢明な協働方法を見出さなくてはならない。

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 果てしない変化が怒涛のように押し寄せる中、リーダーにとって、動きを止めて生き残りに注力することは簡単だ。しかし、立ち止まってはならない。希望の兆しをとらえ、今日の不透明感を明日のチャンスへと変える、独自の機会を見出すのだ。


"3 Ways to Innovate in a Downturn," HBR.org, July 28, 2022.