対話を始める

 自分の考えを正当化し、立場を守りたい衝動も起こるだろう。だがそれは、自分の立場を弱めるだけだ。少しずつ返す言葉がなくなり、結局負けを認めることになる。肩を落とし、首を垂れ、文字通り小さくなった人々を、筆者は目にしてきた。

 反対に、攻撃的になり、相手を叩き始める可能性もある。相手の論理、信憑性、人格を否定する。個人的な問題ととらえ「同僚の前で私の能力を試すとは何事か」と思うかもしれない。

 このピンチは試練だと考える。交渉の場でそうするように、自信を持って問題に対処する能力を示すべきだ。具体的には、次のように行う。

・相手との共通点を見出す。「◯◯に関しては同意見だという理解で正しいでしょうか」

・互いを隔てているものに注意を向けるために、相違点を挙げる。「議論の結果、私たちは◯◯について見解が異なっているようです」

・考えられる選択肢やシナリオを検討し、さまざまな視点から問題をとらえ直す。「これを試したと仮定すると……」「顧客や投資家なら、この問題をどう見るでしょうか」

 ベテラン経営者のマイクは、こうしたピンチを見越して入念に準備した。彼は、信念と自信と雄弁さをもってプレゼンをした。ほとんど舞台のようだった。だが、そこに問題があった。反論されると不安になり、悲しくなった。まるで空気を抜かれた風船のように感じたという。うなだれているように見えた。そのため筆者らは、プレゼンテーションの終わりが彼の貢献の終わりではなく、よりよい結果につなげるべき対話の始まりであることを、彼に気づかせることから取り組んだ。

 厳しいチェックに耐えないアイデアは手放すことが大切だ。過去の仕事に感傷的になるのはやめよう。過去に行ったことはサンクコスト(埋没費用)だ。不快な気持ちはあっても、失敗から学ぶグロースマインドセットを自分に課し、自分自身を、そして目の前の問題を発展させる機会ととらえよう。

自信を持って締めくくる

 自分の仕事を批判されたら、たとえ相手が生産的なディスカッションのつもりでも、謝罪したくなるかもしれない。「一生懸命考えた提案でしたが、気に入ってもらえず申し訳ありません」「このような指摘をされるとは思っていませんでしたので、十分に対応できず申し訳ありません」などと言ったりする(アジリティが高いとは評価されない)。

 この時点で、発表者は同僚やクライアントに議論の主導権を奪われている。議論の内容が要約され、今後の進め方を指南されて、会議が終わるだろう。

 それを避けるには、やり取りの形式や指摘の中身といった会議中の出来事についてコメントすることだ。「あなたはこの件に強い思い入れがあるようですね」「あなたは違う視点をお持ちですね」。そして指摘に感謝を述べる。「いただいたご質問やご指摘のおかげで、提案が磨かれ、まだまだやるべきことがあることがわかりました」

 議論が済んだと感じたら、締めくくる。指摘された点を検討し、フォローアップすることを約束する。対面でもバーチャルでも、笑顔で、頭を上げて、ディスカッションの礼を言い、自信を持って終わらせよう。

 厳しい議論だったかもしれないが、自分の考えと感情を最後までコントロールできた。これを弾みに、よりよい方向へ前進すると自分に言い聞かせ、レジリエンスを養おう。複雑で重要なことに取り組む時には、同僚やステークホルダーの支持が得られるような解決策を見出すのに時間がかかることはよくある。ビジネスライフは長期戦だ。議論を前に進める次の機会を見つけることに集中しよう。

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 仕事にはピンチが付き物だ。それがいつ起こり、どのように展開するかを予測することは難しいが、それに対して準備をすることはできる。この4つのステップのフレームワークは、思慮深く、自信を持って対応する機会を与えてくれるだろう。


"How to Stay Cool When You’re Put on the Spot," HBR.org, July 25, 2022.