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コンピュータを使用してデジタルの製品やサービスを生み出す、デジタルエコノミー関連の多くの仕事ではリモートワークが定着した。これに伴い今後、デジタルエコノミー職に従事する労働力が大幅に増加する可能性があると筆者らは指摘する。労働市場は企業側と労働者側の両側面があるが、本稿では労働者側におけるデジタルエコノミー職への需要増加の背景を、調査をもとに明らかにする。地理的にも、人々の関心の面でも、デジタルエコノミー職は広く求められている。この大きな変化に適応ため、企業は従来の組織文化を見直す必要があるかもしれない。しかし、多様な人材が集まることで、創造性と市場シェアが拡大することは明らかだ。

デジタルエコノミー関連職の拡大

 新型コロナウイルスのパンデミックを機に、リモートワークをめぐる人々の会話は一変した。おおまかに言えばコンピュータを使用してデジタルの製品やサービスを生み出す仕事と定義される、デジタルエコノミー関連の多くの仕事では、この変化によってリモートワークが当たり前になり、それが標準になる可能性さえ浮上している。

 もっとも、日々の働き方にばかり注目していると、パンデミックによって掘り起こされた、より大きな機会を見逃してしまうおそれがある。それは、デジタルエコノミー職に従事する労働力が大幅に増加する可能性である。

 ソルトレイクシティーやマイアミなど人気が急上昇している「ライジングスター都市」に従業員が移り住む、といった話だけではない。米国の至るところで、人々が突然、自分もデジタルエコノミー職に就けると気づき始めているのだ。地理的な障壁が解消されることによって、より多くの人々が、より多くの場所でデジタルエコノミー職を得られるようになれば、その社会的インパクトは計り知れない。

 リモートワークの普及がそうした大規模なインパクトを生み出すためには、労働市場の両面における変化が不可欠だ。つまり企業側では、リモートワークを受け入れなければならない。労働者側では、デジタルエコノミー職の潜在的な労働力の増大と、地理的な拡散が必要になる。

 パンデミックを受けて、企業がリモートワークを受け入れるようになってきたのは周知の事実だ。ツイッターやエアビーアンドビーをはじめ、フルタイムのリモートワークを認めている有名企業も少なくない。

 筆者らがリンクトインの求人情報を分析したところ、2020年2月には米国の有給の求人情報のうちリモートワークはわずか2.3%で、同月中の応募総数のうち、リモートワークへの応募は2.9%にとどまっていた。だが2022年2月には、19.5%の求人がリモートワークを提示し、応募総数の49.7%を集めていた。

 本稿では、あまり知られていないデジタルエコノミー労働市場の供給側の状況を取り上げ、人材の供給がスーパースター都市(サンフランシスコやシアトルのような一流のハイテク拠点)や大都市だけでなく、中規模の都市や農村部にも拡大していることについてもエビデンスを示していく。これは社会や企業、そして求職者にも大きな意味を持つことだろう。