Brand X Pictures/Getty Images

チームが懸命に努力し、完璧に準備を整え、最大限の成果を出そうとするのは当然のことだと、リーダーは思うかもしれない。だが、重要性の低い作業に過剰な時間をかけたり、そもそも見当違いの仕事に囚われたりすれば、目標達成の足かせにもなりかねない。メンバーが時間を浪費することなく、完璧主義に走ることもなく、賢明なやり方で「本来すべきこと」に力をそそぐために、リーダーはどうサポートすべきか。本稿では、3つの方法を紹介する。

 筆者はインド系移民である両親から、強烈な労働倫理を徹底的に刷り込まれた。両親が自分たちの夢を実現するために、長時間、粉骨砕身して仕事に打ち込む姿を目の当たりにしてきたのである。父は常々、こう言っていた。「黙々と、懸命に、ひたすら働きなさい。そうすれば、やがて認められる」

 ところが、「ひたすら、懸命に働け」という父のアドバイスが、筆者の仕事にいつも役立っていたわけではない。

 キャリアの初期に、筆者はシニアエグゼクティブの月例会議で、会社のブランド予測のプレゼンテーションを担当していた。準備に何時間も費やしていたが、手をかけすぎて、明け方までかかったこともある。実際のプレゼンテーションは、10分にも満たないものだった。

 ある時、カフェインの摂り過ぎと睡眠不足のせいで、バイスプレジデントからの質問に頭が真っ白になり、シニアエグゼクティブチームの前で茫然と立ち尽くしてしまった。

 筆者は懸命に働いたが、「本来すべきこと」に力を注いでいなかった。過剰なまでに準備を重ね、完璧さを目指して、もがいていた。上司の指導やコーチングがほとんどないまま、重要性の低い細部にこだわり、見当違いなデータを集めて分析し、的外れな質問に答えることに時間を浪費していたのだ。

 そのような過ちは、キャリアの途上にはよくあることで、私たちは失敗によって学び、よりよいリーダーになれると言う人もいるだろう。しかし、研究によれば、俗説に反して、私たちは正解に近い失敗を犯した時でなければ、失敗からは学べないという。正解に近い失敗を通じて初めて、私たちは学習することができ、正しい情報を保持しようとする記憶力が向上する。そして最終的には、行動を変えるようになる。

 しかし、筆者は自分のやり方をけっして軌道修正しなかった。過剰な準備や完璧志向を、間違いだと思っていなかったからである。また、どのように行動を変えたらよいのか指導してくれる上司もいなかった。

 これまで何十人もの個人を対象にコーチングを行い、キャリアマネジメントを支援してきた経験を踏まえ、筆者はいま、チームがただがむしゃらに働くのを防ぐために、リーダーには果たすべき重要な役割があることを理解している。チームがただ懸命に働くのではなく、より賢明に働くために、リーダーはどのようなサポートができるか。以下に、3つの方法を挙げよう。