一緒に料理や食事をする

 2015年、その前年にトレーガーグリルズを買収し、CEOに就任したジェレミー・アンドラスは、有害な企業文化を刷新しようと、本社をユタ州へ移した。そこで、従業員のためにポジティブな物理的環境をつくることに取り組んだ。

 その一環として、毎週月曜日の朝食と、火曜日から金曜日までの昼食を従業員に共同でつくってもらうことにした。彼いわく、「同僚のために、また同僚と一緒に食事をつくることは、互いへの思いやりを示す一つの方法です」。2020年の従業員満足度調査によれば、従業員は、トレーガーグリルズの企業文化を平均して10点中9点と評価し、91%が会社のビジョン、ミッション、バリューに共感が持てると回答した。

 一緒に料理や食事をすることの効果は、単にコミュニティを形成するだけに留まらない。ある研究者チームは、13の消防署でインタビューを実施し、上司395人に調査を行った。その結果、一緒に食事をすることが仕事のパフォーマンスにプラスの影響を与えていることがわかった。プラス効果は、集金から買物、献立づくり、調理、片付けなど、消防士たちの食事習慣の基礎となっている協力行動によって強化されていると考えられる。一緒に行うことによって、こうした共同作業のすべてが仕事のパフォーマンス強化に結びついたのだろう。

 従業員が一緒に食べる方法を探そう。たとえば、会議室でテイクアウトのランチを一緒に食べる。近くのお店への散歩と、ブレインストーミングや交流を兼ねた食事会を企画する。また、オフサイトで手の込んだ料理を一緒につくらせ、ふだんとは違う状況での協働に取り組ませてもよいかもしれない。

地域社会とつながる

 アイスクリームチェーン、ソルト&ストローの創業者の一人、キム・マレックは、従業員、顧客、さらには店舗を構える地域との間に、つながりの感覚を生み出している。キムはいとこで共同創業者のタイラー・マレックと、創業当初から「地域コミュニティに目を向け、シェフ、チョコレート職人、醸造家、農家にアドバイスを求め、相手から常にインスピレーションをもらっていました」という。

 キムとタイラーは、オレゴン州立大学と州政府農務局とのパートナーシップであり、地域の食品産業や農業を支える企業を支援するオレゴン・フード・イノベーション・センターと提携した。メニューにあるフレーバーには一つ残らず、「協力してくれている誰かがいて、私たちにはその人についてのストーリーを語ることができます。だから、そのアイスクリームを食べると、コミュニティを感じられるのです」と、キム・マレックはクリスティーンに語った。

 「人」の面でいうと、ソルト&ストローは、マイノリティであるBIPOCの学生に有給のインターンシップをあっせんするイマージングリーダーズ、元女性受刑者のための州の社会復帰支援事業、ウィメンズ・ジャスティス・プロジェクト(WJP)などで地域の団体と連携している。

 さらに、障害や犯罪歴など不利な条件下にある人々に雇用機会を創出するDPIスタッフィングとの取り組みを通じて、10人を雇用している。

 地元の学校との連携では、子どもたちにアイスクリームの新しいフレーバーを開発してもらう「生徒開発シリーズ」を毎年実施している。優勝者は、自身が開発したアイスクリームが商品化されるだけでなく、優勝者のいる学校の集会でその発表をし、学校の全生徒にアイスクリームが無償で配られる。

 2021年は、「ラッドリーダーズ」シリーズと題し、アイスクリームフレーバーのアイデアと、それに付随した自作の物語を子どもたちから募った。ソルト&ストローは、このように、地域社会の一員として、地域社会に溶け込み、人々の活躍を後押しする方法を探している。自分たちのコミュニティに意味を生みだしながら、ほかのコミュニティに活力を与えているのだ。

共通のバーチャルな体験をつくる

 バーチャルな環境で働く従業員も、共通の体験を通じてつながる方法を考えよう。

 ユーチューブ・ミュージック+プレミアム・サブスクリプション・パートナーシップを統括するサンジェイ・アミンは、自分のストーリーをシェアしたり、気に入ったアルバムをチームに薦めたり、一つのレシピを皆で試したりしている。決まりはなく、自発的に行っている。率先して弱い部分や人間らしい部分をさらけ出し、オープンな人間であることを心がけて、職場のムードメーカーになろうとしている、とクリスティーンに語った。

 また、チームミーティングの前日に、メンバーに「深い質問カード」を送るようにしている。まったくの任意だが、深い質問に答える形で従業員同士で考えや体験、感情を共有してもらいたいと考えた。たとえば、このような質問を用意する。

・全員に同じ超能力を与えられるとしたら、どんな超能力を選びますか。

・学校で教えてほしい人生の教訓は何ですか。

「遊び心のある楽しい質問をされると、誰もが瞬時に深層に潜り、人がそれぞれに違った目で世界を見ていることが実感できます」

 そして互いに同じ人間であり、その絆に従業員が気づいてくれたという。

 コーチングサービスを行う会社、EXOSは、「ゲームチェンジャー」というプログラムを新設した。長期的にパフォーマンスとキャリアの成功を持続させるとはどういうことかを考え直すことができる、6週間の実習プログラムだ。

 バイスプレジデントのライアン・キャップスは、クリスティーンにこう語った。「かつてのような仕事のあり方に戻ることはけっしてない。ただ生きる(survive)ためだけではなく、豊かに生きる(thrive)手助けをすることに、ビジネスチャンスがあると感じています」

 ゲームチェンジャーの参加者は、EXOSのパフォーマンスコーチや、業界の専門家による指導を受け、仕事や生活で自分のポテンシャルを最大限発揮できない理由に対処する。

 科学的根拠に基づく手法で、好奇心を深め、創造性を呼び覚まし、活力と集中力を維持することを学ぶ。毎週、参加者自身で行う課題と、チームごとにバーチャルで行う短時間のミーティングや状況報告を組み合わせて構成されている。これにより、コミュニティ意識とサポートが得られる。修了した人は、ゲームチェンジャーについて「自分自身が一変する」と評している。参加者の70%がストレスが軽減したといい、91%が「情熱とパーパスを甦らせてくれた」と回答している。