
年1回、オフィスから離れた場所に集まって議論を交わし、自社の戦略を練り上げるエグゼクティブリトリートは、CEOとエグゼクティブが一堂に会する貴重な機会だ。しかし、パワーポイントのプレゼンテーションばかりがスケジュールに組み込まれていては、議論はおろか、戦略の策定にはほど遠い。エグゼクティブを積極的に関与させるには、リトリートの形式を再構築することが欠かせないと筆者は指摘する。本稿では、リトリートの主導権をエグゼクティブがみずから握り、議論に貢献する場に変えるために、CEOが取るべきアプローチを紹介する。
単なる時間の浪費になってはいないか
企業にとって重要な定例イベントであるエグゼクティブリトリートは、2年以上にわたるバーチャル開催を経て、対面式が復活しつつある。
従来の形式はシンプルで、丸一日あるいは2日間、CEOがエグゼクティブをオフィスから離れた場所に連れ出し、議論を交わしたり戦略を練ったりする。参加したエグゼクティブは、各自が成すべき仕事を明確に理解し、同僚とともにチームで働く意識を新たにして、オフィスに戻るのだ。
たしかに、理論上はそうなっている。だが実際には、パワーポイントによるプレゼンテーションによって、スケジュールのほぼすべてが埋め尽くされているのが現状だ。
情報は一方通行で流れ、質疑応答では、誰かがその場で思い付いたことを自由に発言する。エグゼクティブはそれぞれの縄張り争いに終始し、チームワークの欠如が目立つ。最終的な成果物といえば、ほとんど実行不可能で追跡もできない曖昧なメッセージのリストである。つまり、リトリートは高額の費用をかけた時間の浪費になっていることが少なくない。
筆者はこの10年以上、世界各地の大小さまざまな企業で、戦略リトリートを考案し、運営してきた。その経験に基づき、エグゼクティブチームが毎年一堂に会するリトリートの機会を最大限に活用するために、CEOが取るべき、より創造的なアプローチを紹介したい。