リトリートを成功させる3つの教訓
リトリート終了後のCEOとの報告会で、このユニークなリトリートを今後、ルーチンとして繰り返し行うために必要な3つの教訓が明らかになった。
●オーディエンスをファシリテーターに変える
エグゼクティブは、ただ招待された会議で席を温めていればよいのではない。リトリートの最初から最後まで、積極的に関与することが欠かせない。
内容やスケジュールを決める時、詰め込みすぎないようにしよう。参加者が没頭できるように、実際にアイデアを交換したり、戦略について有意義な議論を交わしたりする時間を十分に確保する必要がある。
リトリートが終わると、エグゼクティブはそれについて口を閉ざすことが多い。しかし、ポジティブな情報もネガティブな情報もそれぞれのチームにフィードバックすべきである。
エグゼクティブは、パワーポイントの資料ではなく、1ページのメモで従業員に情報共有することを習慣にする。そのフィードバックに基づいて物事を進め、戦略や投資家へのピッチを実現するために誰よりも働いてくれるのは、エグゼクティブの部下たちにほかならない。
●エグゼクティブの準備とリハーサルをサポートする
その場の思い付きでは、有意義な議論はできない。充実したリトリートは、ジャムセッションではないのだ。
エグゼクティブがプレッシャーを感じても、投資家向けのピッチを手短かつ臨機応変に行えるように、準備と練習の時間とサポートを提供することが必要である。たとえば、常に頭に浮かぶような身近な関係者に限らず、より広範なステークホルダーの気持ちを理解できるように手助けすることだ。
エグゼクティブが各自の戦略を発表したところで、彼らが予想もしないような質問を投げかける。従業員価値、すなわちエンゲージメントやDEI(ダイバーシティ〈多様性〉、エクイティ〈公平性〉、インクルージョン〈包摂〉)、ウェルビーイングなどについて聞く。あるいは社会的価値、すなわち対外関係や規制関連、人権への影響、カーボンフットプリントなどについて尋ねることもできるだろう。
ピッチは、エグゼクティブのストーリーテリングの能力を鍛えるとともに、より透明性のあるオープンな戦略策定方法を構築する貴重な機会である。
●戦略について率直に議論することを奨励する
企業は心理的安全のある文化を促進することの重要性を理解しているが、自分の弱みをさらけ出したいと思う、あるいは実際にさらけ出すことができるエグゼクティブはめったにいない。特に年1回、オフサイトで開催される戦略会議ではそうだろう。
リトリートはエグゼクティブに率直で建設的なフィードバックをする場であり、またエグゼクティブがオーディエンスに共感を伝える練習を行う場でもある。リトリートでは「配慮しつつ、率直であれ」というルールを、全参加者に明確に示すことが欠かせない。
チェックリストを作成できるように、リトリートにおける率直さとは何かを、特にわかりやすく説明している4つのルールを紹介しよう。
・同意しないことを健全な形で表現する。感じのよさではなく、率直であると同時に相手に対する敬意を持つことが大切である。
・挑戦的な質問を受け入れる。
・批判されても、それはあなた個人への批判ではない。学習するために、会話を交わすことが重要である。
・すべての問いに答えられなくてもよい。
最も重要なのは、大きな組織で長い伝統のある慣習であっても、刷新が可能だということである。これまでそうだったから、変えられそうにないと思うようなことでも、刷新することはできる。優れた戦略には、時にほんの少しの創造性が必要なのだ。
"What Makes a Great Executive Retreat," HBR.org, July 04, 2022.