●最後に発言する
多様な意見を引き出し、集団思考を軽減するために、リーダーはミーティングの最後に発言するとよい。自分が知っていることはもうわかっているのだから、ミーティングで必要なのは、相手が知っていることを引き出すことだ。
リーダーの発言を最後にすれば、チームは各自のアイデアや提案を出すように促され、自分の意見に耳を傾けてもらっていると感じ、当事者意識とチームとしての士気が高まる。
ただし、最後に発言するということは、ミーティングの間、ずっと黙っているという意味ではない。リーダーとして、まずどのようなコメントを返すべきかに注意を払うことが欠かせない。たとえば、「なぜ、それが正しい方向性だと考えているのでしょうか」といった質問を投げかけることで、情報を引き出したり、明確に理解したりすることができるだろう。
リーダーが最後に自分の視点を共有したり、意見を伝えるようにすれば、相手が出してくれた意見や情報を踏まえたうえで、発言できるようになる。筆者がコーチングを担当したあるCEOも、このように自分の発言のタイミングを変えるだけで、ミーティングの質が劇的に改善すると述べていた。
●多様な意見の種を蒔く
ユニークな視点や問題解決方法を、自分のチームやネットワークに意識的に取り入れよう。たとえば、チームミーティングに社内の別の部署の人たちを招き、ある状況について異なる視点や見解を示してもらうことができる。
事前に「悪魔の代弁者」を指名して、わざと反対意見を述べてもらったり、対照的な証拠や見解を示してもらったりするのもよい。その目的は、新たな主張を奨励することではなく、議論を深めて、チームとしての意思決定や結果の質を高めることにある。焦点となるのは個人ではなく、あくまでもアイデアである。したがって、悪魔の代弁者に指名された人には、確固たるロジックと代替案を示してもらうことが重要だ。
長期的な観点からは、採用面接を担当するメンバーのダイバーシティを高めることで、採用時に生じる親近感バイアスを緩和することが欠かせない。そして、多様な視点や価値観、専門性によって、偏りのないネットワークの構築に尽力する。
●有言実行する
チームは、あなたの発言に注意を払うが、あなたの行動にはさらに注目している。「行動は言葉よりも雄弁」といわれる通りだ。
あなたはリーダーとして、チームに求める変化の模範にならなければならない。「有言実行」しなければ、あなたのリーダーシップにおけるコミットメントや信頼が見せかけのものになりかねない。
簡単にはいかないかもしれないが、周囲を動かすには有言実行が不可欠だ。リーダー自身が自分の意見やアイデアを上司に共有するなど、リーダーがチームに求める行動の模範を示せば、あなたのメッセージに対する信頼が生まれ、部下にも同じように振る舞うよう促すことができる。
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本稿で紹介したアクションを取ることで、多くのリーダーが知らないうちに陥っている「同意のバブル」から抜け出すことができるだろう。そして、チームや同僚とのつながりやコミュニケーションを強化し、新鮮で独創的な視点を持つことを奨励し、よりよい意思決定を下すことができる。
新しい習慣を身につけることは、難しく感じるかもしれない。だが、変化のペースが速い不確実な時代だからこそ、これまで以上に試みる価値があるのだ。
"How Leaders Can Escape Their Echo Chambers," HBR.org, July 21, 2022.