
優れた意思決定に多様な視点が欠かせないことは、リーダーの多くが理解している。だが、知らないうちに、自分の意見に同意してくれる人ばかりに囲まれる「エコーチェンバー」に陥りがちだ。チームにさまざまな意見やアイデアを求めても、心理的安全性が確立されていない状態では、誰もが口を閉ざし、集団思考に終わる。本稿では、部下から多様な意見やアイデアを引き出し、率直に意見を言える文化を育むために、リーダーが取るべき6つの行動を紹介する。
集団思考を回避し、心理的安全性を確立する
リーダーは階層が上がるほど、自分と同じような考えを持ち、自分に同意してくれる人たちに囲まれるようになる可能性が高い。いわゆる「エコーチェンバー」(反響室)に入ってしまう。これは自分と似ている人を好む、親近感バイアスによって起こる。自分と似ている人と行動をともにし、登用するためである。
この多様な視点が欠落した状態は、2つの要因によってさらに悪化する。すなわち、集団思考につながる問題解決方法と、心理的安全性を確立することの困難だ。これらの条件が揃うと、リーダーはエコーチェンバーから抜け出せなくなるかもしれない。
リーダーのほとんどは、これらの要因を認識し、率直に意見を言える文化をチームの中に構築しようとするが、リーダー自身の些細な振る舞いが、このような意図を台なしにしてしまうことがある。
たとえば、筆者のクライアントのアビラルはソクラテス式問答法さながら、相手に何度も繰り返し質問を投げかけるため、部下はアイデアが「完全に固まる」まで彼の所に持っていきたがらなくなっていた。
一方、マイケルはペースセッター型リーダーシップを執り、とにかく短時間で結果を出そうとしているため、部下は疑問や懸念があっても、それを差し挟んではいけないと思うようになっていた。また、メリッサは「いや」「でも」「しかし」という言葉を頻繁に使うため、部下はミーティングで自分の意見を返したり、反対意見を述べたりしにくいと感じていた。
エコーチェンバーにはまり込むことによる戦略的不利益を防ぐために、以下の行動を実践してほしい。