●常に意見やアイデアを求める

 リーダーがどれだけ平等主義でオープンな姿勢でいても、部下の多くは貴重な情報やアイデア、懸念を伝えることを控える可能性が高い。

 リーダーは次のように、チームに伝えることができるだろう。「誰にでも死角はある。私自身もそうだ。そして、私が自分の死角に気づくには、君たちの助けが必要だ。もし私の言っていることが的外れだと思ったら、質問したり、反論したりしてほしい」と頼む。このような要望を繰り返しチームに伝え、部下には個別に声をかけ、それぞれの意見や考えを求めよう。

 加えて、チームに対して常にアイデアを求めることが欠かせない。必ずしも完璧に練り上げられたアイデアでなくてもかまわないと、明確に伝えておくことだ。さもなくば、アビラルのチームのように「リーダーの質問にすべて答えられなければ、愚かだと思われるのではないか」と恐れ、部下は質問を飲み込んでしまうかもしれない。

 最後に、反対意見を出したり、リーダーのロジックに疑問を投げかける、あるいは反論するなど、部下が声を上げてくれたことを公の場で称えて、感謝することだ。リーダーが、自分の意見に挑戦するようなコメントに感謝していることがわかれば、不安があるため意見を口に出せない部下にも発言を促すことができる。

 ●相手の意見に好奇心を示し、耳を傾ける

 ペースセッター型リーダーシップを執っていたマイケルのように、結果を出すことに注力するあまり、人間関係を育むことを怠ると、チームの信頼やモチベーション、エンゲージメントが低下するおそれがある。さらに、貴重な情報を得られなくなるかもしれない。

 結果ばかりに目を向けるのではなく、チームや同僚のための時間と場所をきちんと確保することだ。たとえば、アジェンダがないからといって、1対1の面談をキャンセルしてはいけない。むしろ、その時間を相手の状況の全体的な理解に使おう。意見やアイデアを求めたり、あなたが把握しておくべき問題はないかを尋ねたりする時間にしてもよい。

 もともと1対1の面談が予定されていた場合も、チームの誰かが「5分ほど、よろしいでしょうか」と言ってきた場合も、相手との会話に完全に集中する。何か別のことをしながら話を聞いたり、いら立ちを見せたり、相手の話をよく聞かなかったりすれば、その相手自身や、相手が言わんとすることに興味がないというシグナルを送ることになる。

 誰かがリーダーの意見に同意できないと言ったり、異論を唱えたりすると、リーダーは反発を覚えたり、その意見を批判したくなるのは自然な反応だが、その衝動を抑えよう。確証バイアスによって、他者の立場や主張の欠点を見つけることはできても、自分自身の思い込みの欠点や穴には気づかないものだ。反証されると、かえって自分の思い込みが正しいという確信を強めることさえある。

 そうではなく、相手の意見に好奇心を持っていることを態度で示し、より理解を深められるように質問を返す。たとえば、「どのようにして、この結論にたどり着いたのでしょうか」「もっと詳しく聞かせてください」といった言い方ができるだろう。

 ●「イエスアンド」を実践する

 相手の発言を「そうですね」と肯定し、さらに「それから」と話を膨らませる「イエスアンド」は即興の基本テクニックだが、アイデアを生み出し、人間関係を構築する実践的哲学でもある。

 ミーティングで自分のアイデアを発表している場面を想像してみてほしい。毎回、誰かが、あなたのアイデアに対して「いや」「でも」「しかし」、あるいは「だけど、実際には」と返してくるとしよう。このようなネガティブな反応を何度もされると、それ以上意見を言う気がなくなってしまうのは当然のことだ。

 仮にあなた自身が、誰かがアイデアや意見を伝えてくれた時にこのようなフレーズを使っているならば、貴重な情報が提供される機会を自分の手で封じているということになる。

 相手の意見を否定するのではなく、「イエスアンド」を用いて、そのアイデアを認め、膨らませよう。当然ながら、すべての意見を採用できるわけではない。だが、アイデアをリーダーが認めることで、発言者は「自分の意見に耳を傾けてもらっている」「検討してもらっている」と感じられ、引き続きアイデアを出してもらえるように促すことができる。