●横の関係を管理する

 リーダーが経営幹部候補を検討する時、候補者と同じレベルの同僚に見解を求めることがある。たいていは非公式な会話の形を取るため、正式な業績評価プロセスの一環とは認識されない。だが、一部の企業では業績評価モデルを変更し、同僚の評価をより重視するようになってきた。最も有名なのは、アマゾン・ドットコムの例だろう。

 ところが、私たちは同僚に対して、必ずしも上司や部下に対するのと同じように、相手が仕事をしやすくなるように気を遣ったり、礼儀正しく接したりするわけではない。したがって、同僚は私たちの弱点について体感し、観察し、理解しているのである。

「同僚は、あなたを最もよく理解している。そして、最も厳しい批評家でもある。なぜなら、彼らはあなたと同じレベルにいるからだ」と、組織心理学者のジョン・ホートンは言う。彼は長年にわたり、職場でアセスメントを行ってきた経験から、リーダーシップの成功を妨げるような行動を、最も露呈しやすい相手は同僚であることを明らかにしている。

 これは、クライアントのために360度評価を実施してきた、筆者の経験とも合致する。

 たとえば、あるクライアントはセールスでトップの成績を収めるという客観的な成果を出していたにもかかわらず、同僚からのネガティブなフィードバックのために、2階級上のエグゼクティブリーダーシップチームに留まり、幹部職への道を閉ざされていた。

 そのネガティブな評価を修復するには、徹底的なフィードバック面接と6カ月間のコーチングを受け、パーセプションマネジメント戦略を構築する必要があった。そのうえでようやく、彼女は自身にふさわしい昇進を手に入れたのである。

 自分が同僚にどのような影響を与えているかを理解したければ、同僚に尋ねてみることだ。定期的に連絡を取り、あなたとあなたのチームの行動が同僚の目標達成にどのように影響しているかを把握する。同僚を支援するための共通基盤を見出し、「返報性の原理」を実践しよう。つまり、誰かが自分のことを助けてくれた時、自分もその相手のことを助けたいと思う心理作用を利用するのだ。

 同僚の意見を聞くことを習慣にすれば、チャンスや課題が早期に顕在化する。それによって関係が強化され、必要に応じて軌道修正もできるだろう。

 時には、ただ相手を肯定するだけでも効果がある。

 筆者のクライアントの一人は、ある重要な同僚になかなか認めてもらえなかった。そこで、その同僚がエグゼクティブミーティングで何か意見を出すたびに、クライアントはその意見の中に何らかの価値を見出し、コメントやボディランゲージなど目に見える形で賛意を示すという作戦を立てた。

 数カ月後、その同僚はクライアントのことをさらに知りたいと思い、一緒にコーヒーを飲もうと誘った。それをきっかけに、実りある関係が始まったのである。