●政治的スキルを磨く

 同僚の存在は、重要な情報を得るのに役立つ。組織で起きていることやその理由について貴重な情報を持っていることが多く、注意を喚起してくれるからだ。

 だが、スタンフォード大学経営大学院教授で、組織のパワーに関する権威として知られるジェフリー・フェファーは、同僚との関係は「さまざまな動機が混在するゲーム」だと、筆者に語ってくれた。彼は単刀直入に、次のように述べた。

「最も優秀で、最も大きな政治的影響力のある同僚は、自分の真の計画や行動を上手に隠すことができる。そのため、最初にすべきことは、その同僚が何を目論んでいるかを、可能な限り見極めることだ」

 筆者が、ある企業のエグゼクティブチームに在籍していた時、最高人事責任者(CHRO)を務めていた同僚は何事についても口が堅く、どうしても必要なこと以外、自分のビジネスプランについて話すことがなかった。彼女が何を目論んでいるのか、本当にエグゼクティブチームのイニシアティブを支持してくれているのか、さっぱりわからなかった。

 それでも、彼女は社長に歩調をぴったりと合わせ、社長の目的が必ず実行されるように尽くした。その努力は報われた。社長が突然、その会社より規模が大きく、さらに有名な企業のCEOになるために退職した際、転職先の人事リーダーとして彼女を引き抜いたのである。

 あなた自身、後れを取らないためには、自社でどのような行動が報われているかを、フラットな視点で評価することが欠かせない。誰が昇進したか、その理由は何かを検討するとよい。戦略を持ち、これはという同僚と連携して、相互利益となる計画を推進するための共通基盤を見つけるのもよいだろう。他人を押しのけるのが当たり前の企業文化においては、より用心深くなる必要があるかもしれない。

 また、自分の感情をコントロールし、ポーカーフェイスを身につけることも有益だ。フェファーによれば、「この世界でやっていくため、ましてや成功するためには、簡単に本心をさらさないこと、そして自己制御が必要だ」という。組織でシニアレベルに近づくにつれて、いら立ちや怒り、疲労感に浸っていられなくなる。士気に影響を与えたり、誤解されたり、関係を壊したりするリスクを回避しなければならないからだ。

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 非公式とはいえ、同僚があなたをどう認識しているかで、昇進機会が大きく左右される。その認識が、公正で正確かどうかは関係ない。野心を抱き、最高経営幹部への階段を上ろうとするならば、本稿で挙げた戦略に留意し、この複雑な関係を上手に乗り越えてほしい。


"Navigating Peer Relationships While Climbing the Ladder," HBR.org, July 27, 2022.