●友情を期待しない
数年前、ある同僚と筆者は、同じ部署でそれぞれ職務の異なるシニアバイスプレジデントの座を狙っていた。筆者は彼女を友人だと思っていた。
長年、一緒に昼食を取り、子育ての悩みを話し合った仲で、前年には会社の成績優秀者上位20人として、ともに表彰されたこともあった。そして、新たに上司となった最高経営幹部の下で、大規模な組織再編を乗り切ろうとしていた。
筆者はそもそも新しい上司にあまり好感を持てなかったが、同僚は明らかに上司に気に入られていた。ヨガのクラスに行く途中で、アドバイスをもらおうとして「新しいボスとの関係づくりに苦労しているの」と打ち明けると、彼女はにっこりと笑い、「どうしてかしら。とても素晴らしい人だと思うけど」と言った。そして、この話は終わりにして二度と触れたくないと、彼女ははっきりとした態度で示した。
この会話とその後のやり取りから、彼女は自分の新しい立場をリスクにさらしてまで、筆者を助けるつもりはないことがわかった。職場の友情は、そこで終わった。筆者は好機がめぐってくるのを待ち、1年後、別の企業でエグゼクティブの職に就くために退職した。
職場で心の通じ合う関係を築くことは大切だが、出世の階段を上る時、感情のつながりを健全な状態に保つことには限界がある。
たとえば、配偶者や子どもの名前を覚えているなど、友好的な態度は保ちながらも、境界線を守らなくてはならない。宗教的信仰や政治的信条などの個人情報を過度に共有すると、関係に対立が生じて、気まずくなったり、仕事が効率的にできなくなったりする場合もある。
職場を、自分にとって重要な感情的ニーズを満たす場所と見なしてはいけない。会社の外で、あなたが大切に思う関係や組織に力をそそぐべきである。