●自分の仕事がチームに利益をもたらしてきたことを示す

 あなたにはおそらく、組織にとって欠かすことのできないスキルや専門知識、あるいは豊富な経験があり、それによって組織の中で「接着剤の役割」を果たしてきたはずだ。周囲の疑問に答え、相手に助け船を出し、同僚の貢献を何倍も意味のあるものにしてきたことを具体的に示そう。

 また、時間的にも金銭的にも人的にも制約がある中で、メンターシップを発揮し、奉仕の精神を持ち、自己犠牲を払い、トップギアで仕事を進めてきたことに目を向けさせるのもよいかもしれない。

 そうすることによって、あなたが多数の「特異性の信用状」を蓄積してきたことを周囲に思い出させることができる。特異性の信用状とはつまり、自分が獲得した「信用」を元手に、多数派の意見に異議を唱えることのできる資格だ。

 ●集団脅威の壁を乗り越える

 グループの利益を最優先していることを説明する。あなたが、チームの成功と存続の可能性を高めることを第一に考えていると、はっきり示すのだ。

 先行投資や短期的な痛みを伴う可能性があることは認めつつ、長期的によりよい未来に照準を合わせていることを伝える。提案の方向性によって、自分が利益を得る立場にある場合は、利益相反の問題に対処する。喚起したいのは、恐怖心ではなく、信頼と好奇心だ。

 この2つの壁を乗り越えれば、聴衆はあなたのメッセージを吟味してくれる。精査の対象が、メッセージの発信者であるあなた自身ではなく、メッセージの内容に移るからだ。これは、非常に大きな成果である。ここで、質の高い、説得力のあるメッセージを届けなければならない。成功の確率を最大化する方法はいくつかある。

 ●「一貫性」に工夫を加える

 誰と話をしても、どれだけ懐疑的な意見が出ても、要点を外してはいけない。説得力のある主張に関する97の研究において、成功の最も強力な予測因子は「一貫性のあるメッセージ」だった。

 だからといって、何も考えずに一つのことを繰り返せばよいというものではない。同じメッセージでもさまざまな方法で表現してこそ、相手の好奇心を刺激し、興味を維持することができる。データだけでなく、エピソードやストーリーを取り入れよう。あなたの提案にどのような利点があるか、詳細を正確に伝えることだ。

 半年後、1年後に相手の行動や思考、感情がどう変わっているかをイメージしてもらおう。あなたのメッセージが、誰にとっても関わりがあることを理解してもらい、相手にとって関心が深く、価値の高いものに結びつけるのである。

 どの主張が誰を惹き付けるかは知りようがないだろうが、マスターリストをつくって、そこから選べるようにするとよいだろう。