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仕事で完璧主義的な傾向や行動が増加している。高い業績への期待と厳格な評価パターンを組み合わせ、完璧にそれらをこなすことで業績が上がるという主張もあるが、完璧を求めるあまり、エンゲージメント、人間関係、仕事と人生への満足度が損なわれるおそれがある。本稿では、職場での完璧主義の発露をパターン化し、それぞれの状況で必要な言葉を提案する。完璧主義の特徴を、職場で前向きな力に変えていくための姿勢をどのように整えるべきか。

欠点のない完璧な仕事は、優れた仕事ではない

 完璧さへのこだわりが強まっている。英国、米国、カナダの若年層を対象とした完璧主義に関する包括的な調査によると、完璧主義的な傾向や行動は著しく増加しており、1989年に比べ2016年時点で32%増加している。テニス界のスーパースターであるセリーナ・ウィリアムズや、プリマバレリーナのカレン・ケインなどの著名人が、徐々に深刻化する完璧でなければならないというプレッシャーについて明かしている。成功を収めても満足ができない、終わりのないサイクルについて語っている。

 完璧主義の特徴は、単に完璧を求める非合理的な欲求ではなく、成功しても不満が持続することだ。さらに悪いことに、成功を妨げることさえある。たとえば、完璧主義の傾向が見られる大学教授が、完璧主義でない同僚に業績で勝ることはほとんどない

 仕事における完璧主義が、仕事に意味を見出し満足しワークライフバランスを育む力を阻害していることを示す証拠も相次いでいる。競争が蔓延する複雑な組織の中で成功するための優れた仕事とは、完璧なものではないことを、マネジャーは受け入れるべきである。優れた仕事とは、従業員に余力と時間、忍耐力を提供してもらいながら、従業員自身の技能向上と、事業の発展を実現するプロセスである。

あなたはどのタイプの完璧主義か

 完璧主義の現れ方は人それぞれで、他者に与える影響もさまざまだ。マネジャーはまず、自分の完璧主義的な基準がどのようなものか、特定しなければならない。つまり、自分の高い基準を誰に押し付けているのか、そして、その期待に応えるために苦労しなければならないのは誰なのか。これらの問いを考えることが、完璧主義の弊害を抑制するための第一歩だ。以下では、完璧主義的な性格を3つのタイプに分けて説明する。

自己中心的な完璧主義者:このタイプのマネジャーは、完璧であること、絶対的な完璧さを追求することが重要であるという内なる信念を持っている。自分の業績が理想とする水準に達しないと、過度な懲罰的思考を抱き、否定的な自己評価をすることが多い。このようなマネジャーは高い業績を達成する傾向があるが、不安、反すう思考、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥りやすい。

社会規定的な完璧主義者:他人が自分に完璧さを求めていると間違って思い込む従業員もいる。尊敬され、受け入れられるには、同僚や上司が課す完璧主義的な基準を満たすことが条件だと考えている。このような他人の期待に対する誤った解釈は、不必要なプレッシャーを生み、うつ病や、頭痛、不規則な睡眠パターン、摂食障害などの体調不良を引き起こしやすくする。

他者志向の完璧主義者:他者の能力と完璧を目指す意思を評価するというタイプの完璧主義が、最も一般的なものだ。このタイプのマネジャーは、他者に対して最高のパフォーマンスを求め、同僚を厳しく評価しがちだ。その結果、特に他者が自分の期待に応えられない場合、不安を煽り、過剰な怒りや敵意を示す傾向があり、職場における人間関係や評判を壊してしまう。