●良好な対人関係を築く
完璧主義者の根底には、他者からの評価を得ようとする姿勢がある。完璧主義は他者との衝突を起こしやすいが、完璧主義のネガティブな解釈は、仲間からのサポートによって緩和することが研究で証明されている。たとえば、家族や友人から支援を受けた完璧主義のマネジャーは、助言や尊敬、励ましによって、ストレスの多い状況でもうまく対処することができる。
よりポジティブな社会経験を積むために、完璧主義者はすべての社会的交流が問題解決や勝利のためにあるのではないと認識しなければならない。他人と競争したり、一方的な助言をしたりするのではなく、共感することを重視する必要がある。
研究によると、完璧主義者は自分の競争心を、他者の仕事の遂行を助けることに向けると、他者と前向きな相互作用を生む。その結果、仲間とのポジティブな社会的体験が、完璧主義的な試みから生じる不安、うつ、ストレス全般を軽減するのに役立つという。さらに社会的スキルが向上し、他人をライバルではなく、協力者として見ることができるようになる。
●感情をコントロールする
部下に完璧を求め続けるマネジャーは、みずから気付かないうちに強い怒りや苛立ち、フラストレーションを表現していることがある。自分の高い業績基準を詳細に、共感できるように伝えるには、感情に基づいた方法を身につけることが有効かもしれない。
感情的になりやすい状況においては、一歩引いてよりポジティブな視点で状況を捉え直すことで、過剰な反応を避けることができる。たとえば、部下が目標に達しない場合、完璧主義のマネジャーは、部下が新たに得た知識、スキル、経験を強調することができる。絶対的な失敗ではなく、パフォーマンスをこのように捉え直すことで、部下は今後のパフォーマンスの向上に集中するようになる。
最後に、完璧主義的な基準が脅かされた時、ユーモアを用いて不満やフラストレーションといったネガティブな感情を和らげることもできる。ロックバンド「ビーチ・ボーイズ」のブライアン・ウィルソンは、こう述べている。「私は真の完璧主義者で、皆がそれに配慮してくれていた。でも、私たちはいつもユーモアで場を和ませていましたよ」
常に「十分」であることの価値
現代の職場では、激しい競争とミスに対する許容度の低さから、マネジャーは非常に厳しい業績基準を設定せざるをえない。高い業績への期待と厳格な評価パターンを組み合わせることで、業績が上がるという主張もあるが、完璧を求めるあまり、エンゲージメント、人間関係、仕事と人生への満足度が損なわれるおそれがある。
結局のところ、散発的に完璧であるより、常に十分であるほうが、仕事でのパフォーマンスは向上し、幸せにもなれる。
"The Costs of Being a Perfectionist Manager," HBR.org, September 07, 2022.