完璧主義の落とし穴を避ける方法
あなた自身やあなたの部下が上記のタイプに当てはまったとしても、マネジャーとして成功しないということを意味するわけではない。
完璧主義に関する組織的な研究で、マネジャーとその関係者が完璧主義的な強迫観念から解放されるための、新たな知見と、証拠に基づいた実用的な方法が明らかになっている。
幸いなことに完璧主義者は、目標志向かつ行動志向である可能性が高く、これらの方法は、完璧主義者が自分への期待を見直せるようになることを目的としている。効果的なリーダーシップ戦略を研究してきた筆者らの経験と、職場の完璧主義に関する専門知識に基づき、完璧主義をマネジメントするための戦略を紹介したい。
●正しい目標を設定する
完璧主義者とともに働く人々ができる最も有益なことの一つは、達成可能かつ挑戦的な目標を設計することだ。そうすることで、従業員の効率を高め、成功への意欲を持続させることができる。完璧主義のマネジャーは、最大限の努力を必要とする短期間のプロジェクト(問題解決、危機的状況への対応など)に対して高い成果を期待することがある。
しかし、完璧さよりも進歩が重要であることを心に留めておかなければならない。このような目標を最初に達成することで、従業員の熱意を維持しながら、重要なタスクの達成を促すことができる。小さな成功を認めることで、進歩がもたらす利益を高めることができる。
●失敗をプロセスの一部として認識する
マネジャーは、失敗や間違いは仕事のプロセスに付き物であると認識するための努力を、意図的に行う必要がある。そうすることで、従業員は失敗を学習の機会として扱う柔軟性を持つことができる。
ミスや失敗を許さないことは創造性を損ねることにつながると、完璧主義のマネジャーは認識しなければならない。リスクを取って失敗した従業員は、失敗を非難されてしまうと、その失敗を引きずって疲弊し、失敗を糧にした新たな仕事ができなくなる。
失敗をプロセスの一部と認識することで、従業員は視野を広げ、課題に対する斬新な解決策を見出し、新しい手法を発見することができるようになる。
●マインドフルネスを育む
マインドフルネスの実践は、完璧主義のマネジャーに利益をもたらす可能性がある。完璧主義的な基準が脅かされた時に、自己批判や破滅的な思考が形成されるのを防ぐことで、セルフコンパッションを促すのだ。
マインドフルネスは、完璧主義者がゆとりを持ち、感情をコントロールするのに役立つ。たとえば、完璧主義の傾向がある音楽家が、少なくとも週に1回瞑想することで、演奏の不安をうまくコントロールできるようになるという研究結果がある。さらに、マインドフルネスに基づく6週間の読書療法を行った完璧主義者の労働者は、ストレスと否定的な感情が減少したことも示されている。
●激励の言葉を使う
カウンセリング心理学者は、過度に批判的な思考を克服するため、ポジティブなセルフトークを推奨している。自分自身や他者が完璧主義に対処するための「言葉」を持つことには価値がある。
たとえば、自己中心的な完璧主義者は、次のようにみずから言い聞かせる必要があるかもしれない。「完璧を求めることは不可能であり、自分を疲弊させてしまいます。すべてのことに多くの時間を費やすことはできないのです。仕事を長く続けるためには、自分をリラックスさせなければなりません」
自己中心的な完璧主義者の部下を持つマネジャーは、「いつも1人で仕事をする必要はありません。仕事に行き詰まったら、いつでも私に声をかけてください。素晴らしい仕事は、1人の人間が一朝一夕にできるものではないのです」と伝えることができる。
他のタイプの完璧主義者にも、同様の言葉がある。社会規定的な完璧主義者のマネジャーは「私は十分、組織に貢献しています。小さなミスをしたからといって、誰も私を低く評価することはないでしょう」とみずから語りかけるべきかもしれない。
社会規定的な完璧主義者のスタッフと一緒に仕事をすることになったら、仕事の成功や失敗がその人を定義するものではないと認識させるのがよいだろう。「私たちにあなたの能力を証明する必要はありません。私たちはあなたの仕事と献身的な姿勢をいつも賞賛しています。懸命に努力している限り、あなたの貢献は評価されます」と伝える。
他者志向の完璧主義者のマネジャーは、自分にこう言い聞かせることができる。「私のやり方で人々に物事を遂行させる必要はありません。彼らがここにいるのは、彼ら自身の能力が高いからです」
同僚に完璧さを求める部下を持つマネジャーは、「相手のペースで仕事をさせ、失敗を一緒に解決することで、その人から多くを学ぶことができます。あなたの同僚は、あなたが期待する以上のことを成し遂げるものです」と伝えてもよい。
このような激励は、自己と他者への肯定的な評価を高めるとともに、完璧主義者が持つ「人の価値は何を達成したかで決まる」という不合理で、絶えず悩まされる思い込みにも対処することができる。