「出世の階段」から「ポートフォリオ」へ
近年、最善のキャリアパスは必ずしも直線ではないと気づく人が増えている。
アメイジング・イフの共同創業者であるヘレン・タッパーとサラ・エリスは、そのような非直線型キャリアを「スクイグリーキャリア」(曲がりくねったキャリア)と呼び、「不確実性と同時に、可能性に満ちた」キャリアパスだと表現している。このスクイグリーキャリアには多くの利点があるが、混乱を招くおそれもある。
HRリーダーが不安を感じやすいのも、その点だ。仮にHR部門が人材モデルのアップデートを全面的に支持していたとしても、非直線型のキャリア人材をどのように集めればよいのか。あるいは、非直線型のキャリア人材向けの施策をどのように設計すればよいのか。
また、それと同時に、新たなキャリアモデルの導入をきっかけに、従業員が自分自身のキャリアについて「考え直しすぎて」しまい、退職に至ってしまうことを懸念するHRリーダーも少なくない。
キャリアポートフォリオのアプローチは、それらの問題を解決し、キャリア開発を新たな次元へと導くものだ。単に、個人がプロフェッショナルとしてのアイデンティティを再考して自身の可能性を最大限に発揮するためのツールというだけではなく、HR部門にとっても「矢」となる。
このアプローチは、人材を有意義な形で惹きつけると同時に、企業として成功するための手段でもある。うまく実行できれば、人材の定着にもつながる(流動的な世界では、直観に反するソリューションは珍しくない)。キャリアポートフォリオのアプローチを、HR部門の未来の成功を約束する施策だととらえることが欠かせない。
自社で実際にキャリアポートフォリオを導入し、推進する方法を以下に紹介しよう。