相手が持つすべてのスキルと経験に目を向ける
マーケティング業務で秀でた実績を出しているが、達成感を得られない従業員がいるとしよう。この従業員は財務やイノベーション、HRの分野でも、優秀な人材を発掘して指導する能力が高く、特に若い従業員から慕われている。なぜだろうか。
それは、彼女がキャリアの初期に、現在のポジションとは関係のない会社に属したり、マーケティングとは異なる領域で経験を積んできたりしたからだ。しかも彼女は、最終的にそれらのキャリアが自分には向いていないと判断した場合であっても、業務に向き合い、しっかりと結果を残してきた。
そのような経歴を持つ彼女が、ビジネスパートナーシップの責任者であることに加え、採用活動の要にまで成長した姿を想像してほしい。彼女はきっと、自分が最も好きなこと、つまり人間関係を育み、相手の可能性を引き出すことに時間を費やしているだろう。
次に、計画的に5年単位で新たなキャリアを形成してきた優秀な従業員について考えてみよう。彼は新たな機会に対して常にオープンにあり、自身の学びを最大化し、より多くの貢献を、より多様な方法で成し遂げたいと願っている。だが、その目標を実現するには、会社を変えるか、自身でベンチャーを立ち上げるしかないとも考えている。
もし、いまの会社がこのアプローチに価値を見出し、インターナルモビリティを高める工夫を重ねれば、彼が今後20年間にわたって会社に在籍し続けることになるかもしれない。
さらに、グローバル展開の拡大により、ダイナミックな役割を担う人材を募集するケースを想像してみよう。ある応募者は、履歴書の「国際的な職業経験」の欄に書ける内容が比較的少ないが、毎年ボランティアで海外に赴き、子どもたちに教えており、そのために自身も外国語を学んでいる。
彼は、両親の財力のおかげで留学でき、家族旅行でパリに行けるような人物が採用されるのではないかと、不安を募らせている。あなたの組織は、彼の心配が杞憂だと証明できるだろうか。
ここで挙げた例に共通するのは、ポートフォリオの「レンズ」が活用されている点だ。履歴書に書かれた内容だけでなく、その人物のあらゆるスキルや経験に目を向け、評価し、活用するのだ。
ただし、あなたがキャリアポートフォリオの支持を明言する前に、そのレンズを磨き、ポートフォリオとは何なのか、あるいはポートフォリオに含まれないものは何かを明確にしておきたい。