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ビジネスを取り巻く環境が激しく変化し続ける中、企業が競争力を維持するには「資本対応力」を身につける必要がある。すなわち、価値の低い用途から価値の高い用途へと素早く資本を移動し、その配分を大幅に変える能力だ。そのためには、キャピタルアクティビズムの実践が欠かせないと、筆者らは主張する。これは、最も生産性の高いアクティビスト投資家やプライベートエクイティファームの行動を、社内の資金やリソースのマネジメントに応用することを指す。本稿では、リーダーがキャピタルアクティビズムを実践するための3つの戦略を論じる。

常に変化する環境下で、競争力を維持する

 ほとんどの企業では、自社の事業分野やイニシアティブに対する資金レベルが、毎年のように大きく変化することはない。とはいえ、ビジネス環境は常に変化している。企業は現在、差し迫った収益の減少やディスラプティブな競争相手、顧客や消費者行動の根本的変化に直面している。

 企業が競争力を維持するには、「資本対応力」を身につける必要がある。すなわち、ビジネス環境の変化に直面した時に、以下のような対応ができる能力のことだ。

・価値が高くなった用途に、資本を素早く移動する。
・価値が低くなった用途から、資本を素早く移動する。
・資本配分を漸進的ではなく、大幅に変える。

 言い換えれば、現在の投資に意味があるように資金を投入するだけでは不十分なのだ。企業の経営幹部が、アクティビスト投資家のような役割を担い、企業全体で最も価値の高い用途に資金が流れるようにしなければならない。

 ガートナーが100社を対象に行った調査で、各社が実際に資本配分をどのように行なっているのかを分析したところ、前述した資本対応力の3要素のうちいずれかをコンスタントに達成している企業は38%、3要素のすべてをコンスタントに達成している企業はわずか17%だった。

 資本対応力が最も高い企業は、資本対応力がより低い企業に比べて、平均で2.5パーセンテージポイント高い経済的付加価値(EVA)を実現している。経済的付加価値(EVA)とは、投下資本利益率(ROIC)から加重平均資本コスト(WACC)を引いたものを指す。

単なるプロセス改善だけでは足りない

 資本対応力の問題に対処する際、投資に関する優先順位の決定プロセスを改善しようとする企業が、あまりにも多い。たとえば、次のような取り組みが挙げられる。

・投資の評価指標を、全社的に標準化する。
・支出承認の過剰な階層構造を合理化し、投資決定権を効率化させる。
・投資案件を簡素化する。

 筆者らの研究では、投資の優先順位を決定するプロセスで生じる障害を減らしても、およそ8割の企業は資本対応力を獲得することができなかった。プロセスの摩擦を減らすだけでは、資金が流れる先を大きく変えることはできないのだ。

 しかし、プロセスの摩擦を減らすだけでなく、筆者らが「キャピタルアクティビズム」と呼ぶ、新たな指針を導入することで、結果は大きく変わった。71%の企業が、高レベルの資本対応力を獲得したのだ。