キャピタルアクティビズムとは何か

 キャピタルアクティビズムとは、最も生産性の高いアクティビスト投資家やプライベートエクイティファームの行動を、社内の資金やリソースのマネジメントに応用することだ。そのためには、機能部門と事業部門のリーダーが以下の方法で、資本の流れを積極的に方向付ける必要がある。

・企業の投資ポートフォリオを、トレードオフと相乗効果の集合と見なす。
・企業の投資選択に「聖域はない、すべてが戦略である」というマインドセットを適用する(現在の戦略が正しいことが前提になる)。

 キャピタルアクティビズムは、資本対応力を向上させる。なぜならば、全社的な優先順位ではなく、サイロ化した優先順位を強化させるようなレガシー投資や新規事業への執着に、積極的に異議を唱えるものであるからだ。

 キャピタルアクティビズムを実践するリーダーは、次の3つの戦略に従って行動する。

(1)差別化要因に徹底的にこだわり続ける

 キャピタルアクティビズムが資本対応力を育む理由の一つは、長期的な企業価値の創造を加速させる、限定された差別化要因を重視するからだ。これにより、異なる事業部門の優先順位が競合し、サイロ化した既存の用途に支出が固定される可能性を軽減することができる。

 たとえば、フィンテック大手のモネリスでは、新規投資案件の提案に対して、投資の優先順位を決定するプロセスを合理化しつつ、差別化要因が確実に強調されるシンプルなプロジェクト採用フォームを開発した。

 このフォームにはスコアリングモデルが採用されており、ミッションの重み付けに関する評価項目に基づき、各プロジェクトについて単一のスコアを算出する。独立したコントロールグループを設定することで、フォームの回答の妥当性を検証し、公平性と客観性を担保する。実際に承認されたプロジェクトのスコアは、分布曲線による相対評価、つまり「強制的ランク付け」がなされる。

 経営幹部は、月1回開かれるプロジェクトの進捗会議で、このランク付けを確認し、新規プロジェクトの資金配分の優先順位を決める根拠となる情報を共有する。このアプローチにより、戦略的に最も整合性が高く、最も付加価値の高いプロジェクトが、投資先として常に優先されることになるのだ。

(2)より機敏に投資配分を実行する

 資本対応力は、資金フローを一度リセットすれば、それで終わりというものではない。組織がいつでも、そして必要に応じて何度でも方向転換できるように、投資配分を変更する能力である。

 ある多国籍ソフトウェア企業のリーダーは、ビジネスの状況が変化して新たな機会が出現するたびに、決められた資金調達プロセスやリソース配分が戦略からずれてしまうことに気がついた。そこで、同社のデジタルエンタープライズサービスグループでは、中核となる事業目標に沿うよう、社内の「プロダクトライン」を軸にリソースと資金を再編成した。

 資金とリソースをいったんプロダクトラインに割り当てた後に、この再編成を行ったため、プロダクトのワークフローに混乱が生じて「行き場のない者」が出てしまった。つまり、プロダクト本来の中核機能をサポートできない、資金不足のプロダクトラインが生まれてしまったのだ。

 そこで、同社ではワークフローの混乱を最小限に抑えたるために、プロダクトラインに対する資金とリソースの配分について、以下の2種類に分類することにした。

・固定された資金とリソースを各プロダクトラインに配分し、安定性を確保して、中核機能をサポートする。
・柔軟性のある資金とリソースは、戦略的優先事項に対するプロダクトラインの貢献度に応じて配分する。さらに、優先事項の変更に応じて再配分できるようにする。

 同社は、IT予算とビジネス/コーポレート投資予算の両者から、プロダクトラインに資金を供給している。IT予算の大部分は固定費として割り当てられ、各プロダクトラインの中核機能をサポートしている。