「タイム・トゥ・コネクト」の実践例
筆者は2022年、世界的なマーケティングコミュニケーション企業であるウェーバー・シャンドウィックのエグゼクティブバイスプレジデント(EVP)で、グローバル・ダイバーシティ・エクイティ・アンド・インクルージョンを担当するジュディス・ハリソンと出会った。
2020年5月、黒人男性ジョージ・フロイドの殺害事件が起きた後、彼女は従業員が集まって悲しみに向き合うための時間を設けた。それ以来、同社では月に1回ペースで、トラウマになりかねない出来事があった場合はさらに頻繁に、この集まりを開催している。ハリソンはこのシンプルな集まりを「タイム・トゥ・コネクト」(つながる時間)と呼ぶ。
このタイム・トゥ・コネクトは、2つの理由で儀式といえる。1つ目の理由は、この集まりは同社が掲げるミッション、つまりプロフェッショナルとしてコミュニケーションに関わる業務とは、直接的には関係ないことだ。
従業員を集めようと思った背景を尋ねると、ハリソンは「そのような出来事について話し合う機会を定期的に持つことに、意味があると思ったのです。どれも、多くの人のメンタルヘルスに多大な影響を及ぼす出来事ですから」と答えてくれた。
2つ目の理由については、同社のブランドインパクト担当エグゼクティブバイスプレジデントのルイス・ウィリアムズが、次のように語ってくれた。
「私は(タイム・トゥ・コネクトの)ファンで、いまとなっては、なくすことはできないと思います。(中略)たとえ、オフィス勤務に戻ったとしても、です。特に、新たに加わった若い従業員にとっては、従業員同士の関係や雇用主に何を期待できるかという点で、まったく新しい世界でしょう」
言い換えれば、ウェーバー・シャンドウィックの従業員は、このような定期的な集まりを頼りにしており、なくなれば寂しく感じるだろう。