サポーティブな職場における「儀式の3P」

 筆者は研究を通じて、儀式が従業員にとって大きな意味を持つ理由についても特定することができた。あるグループやチームが、なぜそれほど行動を共有し続けたいと強く願っているのか、その理由がはっきりしない場面で、筆者は繰り返し、儀式が心理的安全性と目的意識の支えとなり、ひいてはパフォーマンスの向上につながることを見出したのである。

 筆者はこのシンプルな仕組みを「儀式の3P」と呼んでいる。

 この3つのPをタイム・トゥ・コネクトに当てはめることで、リーダーは自社の儀式について、より深く理解できるだろう。現在行われている儀式も、まだ気づかれていない儀式も含めて、である。

 ●心理的安全性

 ハリソンは、タイム・トゥ・コネクトのために集まった従業員に向けて、まずは世界の出来事について用意してきた発言から始める。そして毎回、同じ質問を投げかける。「それで、あなたの調子はどうですか」

 従業員が「この質問に正直に答えてよい」と感じられるように、彼女は集まりの冒頭で、その日のテーマについて自身の見解を語る。みずから手本となることで、従業員も本当の自分をさらけ出しやすくなるのだ。その結果、従業員は安心感を覚え、ライブでもチャットでも事後のメールでも、自分に合った形で答えを返すことができる。

 たとえば、2022年7月にイリノイ州シカゴ郊外のハイランドパークで銃乱射事件が起きた後、メディアリレーションズ担当シニアバイスプレジデントのアンジェラ・サレルノ=ロビンは「私は大丈夫ではない」と答えた。

「このようなセッションは、私たちが互いに支え合って、安全な場所で話をするための時間ですが、今回は違いました。個人的なサポートが必要なのは、私自身でした。ハイランドパークは私の故郷です。子どもたちを『より安全な』場所で育てるために、シカゴからここに一家で引っ越してきました。私たちがいま感じていることを言葉にするのは難しいのですが、家族として、コミュニティとして、そして国家として『私たちは大丈夫ではない!』と言うことはできるのです」

 参加者が泣き叫んだり、大きな声を出したりして、思いを共有することも珍しくない。チャット機能を介して、相手と気持ちを分かち合うこともある。それぞれが自分にとって心地よい形で参加しているのだ。

 彼らは「そうしても構わない」と思えるだけの心理的安全性を感じているようだが、それだけでなく、彼らが本音を明かすことが、他の参加者の安心感にもつながっている。チーフ・オブ・スタッフ(CoS)を務めるジル・タネンバウムは、次のように表現している。

「あの集まりで感情を揺さぶられるとは思っていませんでしたが、人間性と率直さにとても感動しました。壁の外側では、情熱的に激しく議論されるテーマであっても、壁の内側は安全だと感じられ、深く支えられ、常に思いやりのある対話を進めることができます」

 結局のところ、心理的安全性を創出は、リーダーがそれを具現化する意志を持つことから始まるのだ。

 ●目的意識

 従業員が組織の中で目的意識を見つけられることが、エンゲージメントとイノベーションにとって欠かせない。そのための一つの方法が、企業の価値観を明確かつ実行可能なものにして、それを広く浸透させることだ。従業員の共有体験に目的意識を組み込むには、企業の価値観を重要な儀式に結びつけるのが最適である。

 ウェーバー・シャンドウィックの勇気、インクルージョン、好奇心、インパクトといった価値観は、そのような結びつきをつくるのに、特に適している。タイム・トゥ・コネクトは、企業の価値観に基づいた極めて強力な共有経験を通して、個人としてのパーパスとプロフェッショナルとしてのパーパスを結びつける理想的な方法だ。

 この儀式が始まり、継続していることは、従業員および企業のリーダーシップの勇気と好奇心の表れといえる。未知の世界に飛び込み、難しい会話を切り出すのは、まさに勇気ある行為だ。また、人々が互いの話に耳を傾け合う場を設けるのは、好奇心の表れである。

 「タイム・トゥ・コネクトのおかげで、議題となる出来事から影響を受けた従業員だけでなく、あらゆる人々が共有できる、安全かつインクルーシブな場所が生まれました」と、従業員から感謝の声が寄せられている。