(4)資本
これは最も難しい部分だ。従業員の大半にとって、自社の株主は遠い存在であり、悪意があるように感じられることも多いからだ。
しかし現実に、上場企業の株主になっているのは、そのほとんどが確定拠出年金や教育資金積立制度のように、一般の人たちの退職後の生活や資金ニーズを確保するための投資プログラムだ。多くの未上場企業でも、同じような構造になっている。
顧客や同僚ほど大きな動機づけにはならないかもしれないが、自身の仕事が、自分と同じような人たちの夢や願いを経済面から支えているかもしれないと思えば、みずからの仕事が生み出す価値をもっとポジティブに感じられるだろう。
(5)提携業者、サプライヤー
どこかの会社の提携業者やサプライヤーになったことがある人ならば、それがいかに大変な役割であるかを知っているだろう。得意先につけ込まれたり、疎かに扱われたり、八つ当たりされたりすることも少なくない。
したがって、提携業者やサプライヤーに接する時は、これまでとは振る舞いを変えることが欠かせない。むしろ、こちら側から何か相手の役に立てないかという姿勢を見せるチャンスだ。
サプライヤーのためを考えてくれるという評判を得た従業員や企業は、サプライヤーとより好ましい関係を築き、市場で真に差別化できる評判を確立することで、恩恵を得ることができる。サプライヤーのためになる行動を取ることで、サプライヤーとよりよい関係を築くことができたと感じ、自分自身もよりよい気分になることができる。
(6)自分が大切にする人たち
私たちが働くのには理由がある。多くは家族を養うため、そして家族にさまざまな機会を与えるために働いている。配偶者や子どもがいない人は、親やきょうだい、友人を養うために働いているかもしれない。
自分の仕事から得た報酬で、自分が心から大切にしている大義や組織をサポートする人も多い。日々の仕事がつらくても、自分の仕事が大切な人のためになるという事実があれば、慰めを見出すことができる。
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誰かのために役立つという「サービス」の概念を仕事の中心に位置づけるには、自分がやることすべてに、そのマインドセットを浸透させなければいけない。就業時間外のボランティアに留まらず(それも重要だが)、仕事に取り組む時にはすべての活動において、そのことを心がける必要がある。
このように、常に相手のためになることを忘れない人は、より幸せで、より充実した毎日を送っている。「サービス」というマインドセットを推進し、それを企業文化の中心に位置づけている企業は、従業員のエンゲージメントとモチベーションを高め、その恩恵を得ることができるはずだ。
"Feeling Demotivated? Consider How Your Job Helps Others," HBR.org, August 25, 2022.