(1)顧客、利用者
どのようなビジネスも、その中核には顧客がいる。顧客のためにならないビジネスは、失敗するものだ。
しかし私たちの多くは、日々の仕事で顧客から遠く離れていると感じている。医療機器メーカーの経理担当者は、自社製品によって命を救われている人たちに会うことはないかもしれない。テーマパークの調達担当者は、そのアトラクションがもたらす喜びを目の当たりにすることはないかもしれない。
自分の「サービス」が顧客に届くプロセスを従業員が実感できるようにすることは、従業員にとっても経営幹部にとっても容易ではない。
あるエグゼクティブは、毎年開催される全社会議で、実際に自社製品を利用した顧客に話をしてもらい、その製品が顧客自身の人生にもたらした変化を従業員に伝える機会を設けているという。ハーバード・ビジネス・スクール教授のフランチェスカ・ジーノは、業務にバラエティを持たせる、自分たちの仕事が最終顧客にもたらすインパクトについての動画を作成するなど、サービスが顧客に届いていることを従業員が実感するための方法を、いくつも紹介している。
いかなるアプローチを取るのであれ、自分の仕事が顧客に与えるインパクトを知る方法を見出すことは、誰かの役に立つ「サービス」というマインドセットに不可欠である。
(2)同僚
幸福で充実した人生にとって、深く幅広い人間関係ほど重要なものはない。だが、そのようなポジティブな人間関係が、多くの職場環境で欠如している。ポジティブな人間関係がある職場では、それがエンゲージメントにとって絶対的に不可欠なものとなっている。
ある会社のマネジャーや従業員が、顧客にサービスを提供するのと同じように、同僚にも「サービス」を提供するならば、どのようなことが起きるだろうか。たとえば、マネジャーは、優れた従業員に感謝の気持ちをもっと上手に示したり、その功績を表彰したりする方法を学ぶかもしれない。
マインドセットの転換の核になるのは、すべての従業員が日々、誰かのためになる行動を選択することである。これが実現すれば、人間関係に革命が起きるだろう。そのために必要なのは、自己中心的な考え方や競争心から、励ましやサポートへとマインドセットを変えることだけだ。
(3)地域社会
いかなる組織も、地区、町、市、州あるいは国といった地域社会の中に存在する。コミュニティサービスプログラムを実施する企業は、採用活動や人材開発、従業員エンゲージメント、人材の定着など、数多くの恩恵を受ける。また、従業員の関心や情熱をそれらのプログラムに反映させれば、従業員のモチベーションが高まり、地域社会における会社の評判もよりよいものになるだろう。
ジョージア大学テリーカレッジ・オブ・ビジネス特別教授のジェシカ・ロデルは、このようなプログラムを効果的に実施する方法を詳しく説明している。たとえば、物事の意義に重点を置く、従業員の関心に基づくボトムアップと、企業が仕組みでそれを強化するトップダウンのバランスを取る、コミュニティサービス活動によって恩恵が得られる人たちのような他のステークホルダーを活動に含める、といった措置だ。
あなたの組織にはいま、どのような形で地域社会に貢献する機会があるだろうか。