
従業員のエンゲージメントやモチベーションが低下の一途をたどる中、企業はさまざまな策を講じているが、そこで見過ごされがちなのが「サービス」という概念だ。人は、自分が「誰かの役に立っている」と感じることで、幸福で充実した気分になり、モチベーションもエンゲージメントも高まる。その結果、収益性や生産性の向上など、会社にも数多くの恩恵がもたらされるのだ。重要なのは、その「サービス」の対象が自社の顧客に留まらない点だ。本稿では、自分の仕事を誰かのための「サービス」だと認識することの重要性を論じ、その対象を6種類に分けて説明する。
日々の仕事で、相手の役に立つ機会は無数にある
従業員のエンゲージメントとモチベーションが、いまほど重要な課題となっている時はない。彼らは切実に、みずからがエンゲージしているという感覚を求めている。
米国のプロフェッショナルを対象にした2018年の調査では、10人中9人が「より意義深い仕事ができるなら、報酬が下がっても構わない」と回答している。また、エンゲージメントの高い従業員はパフォーマンスが高く、バーンアウト(燃え尽き)せず、勤続年数が長い傾向がある。
これはつまり、企業が従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めれば、ビジネスの成功につながるということだ。ギャラップの調査によれば、従業員エンゲージメントで上位25%に入る企業は、下位25%の企業に比べて、収益性の向上(23%)、生産性の向上(18%)、欠勤の減少(81%)、顧客エンゲージメントの向上(10%)など、数多くの恩恵を享受する。
にもかかわらず、ほとんどの従業員は仕事にエンゲージメントを感じられずにいる。2021年のギャラップの調査によれば、米国で仕事にエンゲージメントを感じている従業員はわずか36%で、世界では15%しかいなかった。さらに最新の調査結果では、2022年も従業員エンゲージメントが低下し続けていていることが示されている。
もちろん、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める方法は数多くある。なかでも、パーパス志向の仕事文化をつくることが重要とされている。
しかし、ここで見過ごされがちなのが「サービス」という要素だ。「自分が誰かの役に立っている」と感じることほど、心理的・精神的・身体的健康にポジティブな影響を与えるものはない。
誰かのためになることが、人生に意義やパーパスをもたらす中核的要素であることは、さまざまな研究から明らかになっている。ボランティア活動がストレスを抑え、抑うつ状態に陥るのを防ぎ、幸福感をもたらし、自信を高めること、さらには身体的健康と正の相関関係にあることも、研究からわかっている。
そして私たち自身も、自分が誰かの役に立つことで、幸福で充実した気分になり、モチベーションやエンゲージメントが高まることを知っている。
幸いなことに、私たちは皆、日々の仕事の中で、誰かの役立つ機会が無数にある。ただし、実際にそれらの機会に気づくこと、会社がそれらの機会を明確に提示することは難しい。
そこで、自分の仕事を誰かの役に立つ「サービス」だと認識し直し、同僚や従業員にもそうするように促してみよう。このようにマインドセットを転換することで、物事を大きく変化させることができる。日々の仕事の中で「サービス」の対象となる相手は、主に6種類に分類される。