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取締役会に多様性が必要なことは既知だが、表面的な多様化の達成で満足してしまうことが少なくない。真の多様性は、企業に意義ある進化をもたらす。筆者らは、取締役会の多様性と財務パフォーマンスを分析し、取締役会が本当の意味で多様性を有する企業と、そうでない企業の差を明らかにした。

取締役会の構成を変えるだけで、多様な視点を取り込めるのか

 取締役会にダイバーシティが必要なことは広く知られている。欧州では多くの国が、上場企業の取締役の40%以上を女性にするよう義務付けている。米国でも一部の州には類似の法律があり、性別または人種に基づき一定の比率で人数の割り当てを義務づけるクオータ制が敷かれている。

 たしかに、そのような政策は実質的な進歩を生み出してきた。たとえば、ある報告書によれば、FTSE100企業(ロンドン証券取引所上場企業の時価総額上位100社)の取締役会における女性の割合は、過去25年間で5%から40%へと8倍増加した。

 とはいえ、意思決定に多様な視点を確実に盛り込むためには、単に取締役会の構成を変えるだけで十分なのだろうか。

 筆者らは新たに手掛けた研究で、取締役会メンバーの表面的な多様化であるレプリゼンテーションだけに留まらず、メンバーの多様性が高まった時に取締役会の行動がどう変化するか、また、多様性の向上が取締役会だけでなく組織全体にプラスの影響を与えるために、取締役会は何をすべきかを探った。

 具体的には、まず、FTSE350の全企業について、取締役の多様性と財務パフォーマンスの関連をデータで分析した。次に、世界中の取締役およそ100人に詳細なインタビューを行い、取締役会のダイナミクスに関する定性的な情報を得ると同時に、取締役会のインクルージョン(包摂)に関する状況と、行動パターンを定量化するための40の質問から成る体系的なアンケートに答えてもらった。

 これらを分析した結果、多様性は取締役会に多大な恩恵をもたらすが、それが実現するのは取締役の意見を聞き、評価し、真の意味で採用される場合に限られることが明らかになった。

レプリゼンテーション以上のものを追求する利点

 研究の結果、インクルージョンには2つの利点があることがわかった。第1に、少数派の属性を持つ取締役が効果的に溶け込んでいる取締役会では、より協調的な意思決定プロセスがみられる。

 具体的には、女性の取締役が溶け込めていない取締役会では、より競争的なコミュニケーションスタイルが用いられる傾向があり、さまざまな視点について十分に議論するよりも、早い段階で採決に走るケースが多かった。そのため、根底にある意見の不一致が覆い隠され、特定の視点が見落とされる可能性が高まり、取締役会がみずからの決定を過信しやすい。

 対照的に、女性がより深く参画している取締役会では、意見の相違が生じた場合に時間をかけて問題の共通理解を図る傾向がみられた。その結果、全員が問題点を理解し、誰の声も無視されることのない、より統一性のある決定が行われていた。

 第2に、このようなインクルーシブかつ協調的な意思決定プロセスは、業績の改善および株主との良好な関係構築につながる。特に、取締役会に女性取締役が十分に溶け込んでいる企業(たとえ女性取締役が1人しかいないとしても)は、真のインクルージョンを重視せずに多様化を進めてきた企業と比べて、株式リターンが10%高く、取締役会の決定に株主が公式に異議を唱える確率は8%低かった。