レプリゼンテーション以上のものを追求する際の課題

 当然ながら、単に多様な顔ぶれを集めるレプリゼンテーションの次元を超えて、真のインクルージョンへと移行するのは容易なことではない。筆者らの研究を通じて、女性や有色人種の取締役会への参画を阻む共通の課題がいくつか浮き彫りになった。

 ●参画には時間がかかる

 まず、取締役会の中で信頼を構築するには時間がかかる。過小評価されやすい少数派グループ(過小評価グループ)に属する人材が取締役に登用されたとしても、一般的に既存の取締役は新規メンバーをすぐに信頼することはできず、相手を能力の低いトラブルメーカーと見なす場合さえある。

 しかも、女性を取締役会に加えることで得られる測定可能な業績上の利点──株価やEBITDAマージンなどの指標の上昇──は、就任から3~5年経過してから表出することも明らかになった。

 ●過去の経歴がステータスを左右する

 第2に、過小評価グループに属する取締役の経歴は往々にして、白人男性の取締役よりもステータスが低いとみなされやすい。

 上場企業のCEOやCFOの経歴を有する取締役はステータスが高いとみなされる傾向にあるが、そのような役職の経験者は白人男性である可能性が高い。反対に、過小評価グループに属する取締役は、役職を担ったケースが少なく、他の経歴を積んでいてもステータスが低いとみなされがちだ。

 ●デメリットが重なる

 最後に、過小評価グループに属する新任取締役には、社会経済的に比較的上位の階級に属する者が多く、彼らはそのおかげで既存の取締役との間に信頼関係を構築しやすいことも明らかになった。

 彼らは同じ大学で学び、共通の趣味を持ち、同じスポーツを追いかける。つまり、馴染みのある文化に加わることになるため、比較的容易に同化できたのだ。

 一方、低い階級に属する取締役の場合、新たな同僚との関係構築はずっと難しい。質問の仕方やコミュニケーションスタイルの違いが原因で、他の取締役に気まずい思いをさせたり、「ゲームのルール」全般を理解していなかったりしたために、相手の神経を逆なでしやすかったのだ。

 一例として、あるラテン系の女性取締役はこう語った。「私にとって取締役会は、外国映画を字幕なしで見るような経験でした。筋書きや登場人物はぼんやりと理解できますが、それが本当に意味するものが何なのかはわかりません。貧しい地域で育った私には、意味不明な隠語や内輪のジョーク、文化的なネタが満載で、本当の意味で参加できるようになるまでに何年もかかりました」

 筆者らの調査によれば、取締役会は多くの女性を任命してきたが、その大半は白人かつ高い社会階級に属する者にほぼ限られている。そのような女性取締役は、既存の取締役と似たような視点を有する傾向が強い。つまり、ジェンダーの面でよりインクルーシブになった取締役会であっても、複合的なハンディを抱えた人材を登用して溶け込ませるという点では、まだ道半ばであるケースが多い。

 一人ひとりの属性は、性別や人種だけでなく、社会階層などを含めて多層化し、交差している。つまりインターセクショナルなアイデンティティの重要性を認識することで、真に多様な視点を得ることができる。