(1)去ってもよいことを知る

「そこに留まって、虐待を受け続ける必要はありません」と、ジェンキンス・ヘンリーは言う。有色人種女性の多くは、「そこで戦わなければならない」と感じている。自分が家族の中で初めて企業でのキャリアを積んでいる場合は、特にそうだ。

 だがジェンキンス・ヘンリーは、差別を受けたり、マイクロアグレッションと偏見に継続的にさらされている女性たちに向けて「別の舞台で戦ってもよい」と呼びかけている。彼女のクライアントである多くの女性たちは、職場で勝つために必要な力を有していることを証明しなければならないと感じている。しかし、ジェンキンス・ヘンリーはそのように感じているクライアントに、力を証明するために生じるコストを考えるよう促している。

「私たちの内面には守るべき部分があります」と、彼女は言う。認知の歪みや不安、憂鬱、孤独に囚われていると、そのことを忘れてしまうが、「職場で差別を受けた時には、精神の傷ついた部分を守るべきです」

 (2)状況に応じた対処法を見つける

 偏見や差別に直面しても、経済的な理由で退職できない、あるいは昇進したり、株式や福利厚生の権利が確定したりするまで待つ必要がある、といった事情を抱える人もいると、ジェンキンス・ヘンリーは指摘する。「だから私は、いつもクライアントに、もしその仕事をやりたいのなら仕事を続けられるよう、状況に応じた対処法が必要だと伝えています」

 たとえば、瞑想の実践や、十分な休息と食事、運動を確保するための戦略がそれにあたる。有色人種の女性が偏見に満ちた職場という外的な課題を乗り越えるためには、内面にエネルギーを蓄える必要があるのだ。

 (3)サポートネットワークを見つける

 ジェンキンス・ヘンリーは有色人種の女性たちに、自分にとってのサポートネットワークの顔ぶれについて考えておくよう勧めている。「教会組織、ソロリティやフラタニティ(大学の友愛会)、同僚のネットワーク、あるいは従業員のリソースグループ。あなたを支えてくれるのは誰か、状況を把握しているのは誰か、どこに行けば孤立を感じずに済むのかを見極めておくべきです」

 サポートネットワークは、あなたが自身の力や強さ、そして癒しを見つける助けになってくれる。他にも、セラピストやコーチ、友人やパートナーもサポートしてくれるかもしれない。大切なのは、周囲を巻き込むことだ。有色人種女性にとって何より重要なのは、孤立しないことである。

 (4)出口戦略を練る

 有色人種女性は「退職のタイミングはいまが適切か」「プランBを用意すべきか」「私はいますぐ辞めるほど苦しんでいるだろうか」といった点を自問すべきだ。

 即座に退職する必要がある場合は、医療休暇の申請や診断書の取得といった選択肢を検討するとよいと、ジェンキンス・ヘンリーはアドバイスする。また、社内外で新たな役割を見つけたり、サバティカルのような休暇を取得したりすることも、出口戦略の一つだ。

 もちろん、自身の経済状況を振り返り、どのような選択肢とサポートがあり得るかを理解することは重要だ。「私が経験したこと、つまり、ある日突然仕事に行けなくなるような事態を防ぐよう、心掛けています」と、彼女は言う。

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 職場での人種的偏見や差別が、メンタルヘルスに重大なダメージを及ぼすことが明らかになってきたのは、ごく最近の話だ。有色人種女性にとっては、自身のウェルビーイングを優先させることが重要だ。

 対処法を考え、サポートネットワークを見つけ、出口戦略を立てよう。そして何よりも大切なのは、職場の制度的偏見が自分のせいではない、と理解することである。


"The Psychological Toll of Being the Only Woman of Color at Work," HBR.org, September 20, 2022.