
オフィスが再開したものの、何を着ていけばよいか迷った経験はないだろうか。パンデミック前のように、スーツにヒール、地味な色合いやスタイルといった職場に期待されるルールを守るべきか。あるいはリモートワークをしていた時のように、チノパンやジーンズでも許されるのか。オフィス復帰が進んでいるいまこそ、自分たちの手でルールを書き換えるチャンスだと、筆者は主張する。本稿では、服装を見直したいが、周囲の目が不安でどうしたらよいかわからない時、新たな境界線を引き、本当の自分らしさを表現できる服装で仕事をするためのステップを紹介する。
職場のドレスコードは進化している
フォーチュン50に名を連ねる大手金融機関で初めて基調講演をした時のことは、いまでも覚えている。力強い第一印象を与えたいと思った筆者は、老舗百貨店のノードストロームに行き、講演料の10%を投じて「ビジネスの成功を証明する」ジミーチュウの靴を買った。
以来、その黒いスティレットヒールを履いて、世界中の演壇に上がってきた。確かに「自分は強くて、パワフルだ」と思わせてくれる靴だが、同時に足が痛くなる。
会社勤めを経験したことのある人ならば、職場での服装に関する明確なルールも、暗黙のルールも承知しているだろう。高価なスーツにヒール、そして地味な色合いやスタイル。多くの人たちがキャリアアップのために、それらの期待に忠実に応えてきた。特に女性はそのことを実感しているはずだ。
伝統的なビジネスウェアは安全だ。そして、オフィスマナーというものは、その人物の評判や人間関係、ビジネスの成果次第で、選択的かつ不公平に適用されることも少なくない。「スーツを着て、仕事に集中するほうが楽だ」と感じる人もいるだろう。
しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、家の中にこもり、Tシャツとスウェットパンツの上に、慌ててビジネス用のジャケットを羽織るような生活が2年間続いた結果、心地よさ、そして心地悪さに対する私たちの耐性は変化を遂げている。
ビジネスのドレスコードは進化している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は最近の記事で「職場の西部劇化」を指摘し、米公共ラジオNPRではマンハッタンにある紳士服店オーナーのケン・ギドンが、その不確実性を論じている。
いまは「混乱という言葉がぴったりです(中略)人々は、どうすればよいのか本当にわかっていません」。オフィスが再開されたものの、何を着ていけばよいのか、以前より自信が持てなくなっていると、ギドンは指摘する。「スラックスで出勤すべきか、チノパンでも構わないか、ジーンズでも許されるのか。誰も境界線を示していませんし、誰も正しい答えを知りません」
オフィスに戻るに当たり、自分の服装を見直したいが、他の人にどう思われるか心配だという人もいるだろう。そこで、服装を変えようと考えている人に、試してほしい4つのステップを紹介する。