●周囲を観察する
自分だけの考えで、服装を変えるのは危険だと思う場合には、職場で周囲を見回して、他の人がどのような服装をしているかを観察してみる。
筆者は、自分のクライアントがオフィスでどのようなことを観察しているか、アンケートを始めた。最近も、あるグループコーチングのセッションで金融の専門職(の男性たち)に、オフィスに戻ってドレスコードが変わっているかどうかを尋ねたところ、ほとんどの人が頷いた。
「以前は保守的すぎて、失敗しがちでした。いまはネクタイをやめました。新鮮です」といった答えもあれば、「最後にネクタイを締めたのは、うちの会社のCEOがオフィスに来た時以外では、老人ホームにいる顧客を訪ねた時です」といった答えもあった。
顧客も服装がカジュアルになり、ドレスコードもフォーマルなものから、あるエグゼクティブが「カントリークラブ・カジュアル」と呼ぶものに変わっているという。誰かの真似をする必要はないが、最初の一歩を踏み出す人を見れば、自分も変わろうと勇気づけられるかもしれない。
また、境界線についても観察することだ。筆者のクライアントの話では、顧客と会わない時はドレスダウンする可能性が高いという。周囲の人々が、いつ、どのようにドレスダウンをするか、そのニュアンスを探ってみよう。
●実験と評価を行う
同僚は特に服装を変えていないが、自分は変えるべきだと強く感じているならば、あなた自身が率先して服装を変えてみることだ。何か一つ、目に見える変化を試して、それに対する周囲の反応を評価する。
たとえば、前述した筆者のクライアントのようにネクタイを外したり、ハイヒールを脱ぎ捨てて、履き心地のよいフラットシューズに変えたりすることもできるだろう。人々がどのように反応するか、あるいは反応しないかを観察する。
筆者はプロのスピーカーであるため、大企業の一員だった時よりも自由度が高い。ただ、自身のクライアントが大企業であることから、本能的にいつも安全策を取ってきた。それでも、実験してみようと決めた。
2022年に入って、米国銀行協会(ABA)のイベントで登壇することになり、2年振りの大舞台に向けて準備をしていた。荷造りをしながら、黒のスティレットヒールに足を入れてみたが、それを履こうという気持ちにならなかった。何かが「違う」と思ったのだ。
そこで、筆者は新しいことに挑戦してみることにした。これまで登壇するたびに履いてきた黒の「パワーシューズ」の代わりに、ビジネスドレスに似合うキラキラしたスニーカーを選んだのだ。
そのスニーカーを履いて2日間連続で会議に参加したところ、驚くようなことが2つ起きた。まず、ヒールを履いている時に比べて、壇上でパワフルに感じられたことだ。ヒールが演台の隙間にはまらないかと心配することなく、自分のメッセージと聴衆に集中できたのである。
もう一つの驚きは、繰り返し呼び止められて、靴を褒められたことだ。エレガントな服装の銀行員たちが近づいてきては、「私たちも、そういう靴を履いて構わないのですね」と嬉しそうに声をかけてくれた。
スニーカーの写真をリンクトインに投稿すると、圧倒されるほどの反響があった。その投稿は13万回以上閲覧され、1000件を超えるコメントが寄せられた。そのほとんどが、筆者のネットワークである金融サービス業界のプロフェッショナルからのもので、全員がこの変化を全面的に支持していた。
「こんなふうに感じているのは、自分だけだと思っていました」「快適さは自信を高めてくれます」など、さまざまなコメントがあり、多くのプロフェッショナルがそれぞれの新しいオフィスシューズの画像をシェアしてくれたのである。