(1)共通点により友情を喚起する

 複数の研究によると、友人関係をもたらすもっとも強力な原動力の一つは「類似性」だ。従業員の間に共通点(お気に入りのテレビ番組や趣味、誕生日など)が多いほど、意気投合する可能性は高くなる。20年近く親友関係にある人たちを対象にした研究によると、長期的な絆のもっとも強い予測因子は、最初に出会った時の類似性のレベルであることがわかった。

 このインサイトを活用し、マネジャーは、部下たちがお互いに共通点を見つけやすくなるよう促せばよい。新人研修はその絶好の機会だろう。新人の職歴を紹介するだけではなく、事前に話をして、個人的な関心事をいくつか聞いておき、歓迎のメッセージに盛り込むことを検討してみよう。

 新人の関心事をチームに紹介すると、すぐに人間的な魅力を知ってもらうことができ、既存のチームメンバーが共通点を見出して絆をつくりやすくなる。また、個人的な関心事を聞かれた新人は、上司に大切にされている、自分の個性が貴重だと思われていると感じられる。これは他社との差別化要因にもなる。従業員の88%が、自分の会社の新人研修には改善の余地があると考えている。親睦のきっかけとなるように新人の紹介方法を工夫すれば、組織を差別化すると同時に、より効果的なコラボレーションを促すことにつながる。

 (2)共通の目標を示す

 同じマネジャーの下にいる従業員が、自分たちをチームと考えるのは当然のことだと思うかもしれない。だが、必ずしもそうとは限らない。チームを率いる上で決定的に重要なことは、従業員が同僚を単なる同僚としてではなく、チームメートと見なすようにすることだ。問題は、それをどう実現するかである。

 社会心理学者らは長年、共通のゴール、すなわち共通の目標に向けて協力する経験が、友情を芽生えさせ、育てることを指摘してきた。実際、複数の研究によると、同僚を自分の成功に不可欠な存在と考える働き手は、より親密な友人関係を築き、意見の相違が少なく、自分の仕事をより有意義なものと見なすことがわかっている。

 多くの組織で見られるのは、意外にも、共通の目標を見つけることが難しいという問題だ。チームメンバーがそれぞれ異なるプロジェクトに取り組んでいる場合は、特にそのような問題を抱えやすい。自分の目標と同僚の目標とが一致していると感じられないと、派閥やサイロや対立が生まれる。

 しかし、チーム内でのコラボレーションが制限される場合でも、共通の目標を掲げることで、リーダーがチーム意識を構築するための貴重な機会がもたらされる。たとえば、プロジェクトではチームワークが求められることを強調してもよいだろう。重要なコラボレーションに注目を促したり、チームの成功に重大な(しかし見過ごされがちな)貢献をした人物に対して、みんなの前で感謝の気持ちを表現したりするといったシンプルな方法でよい。

 もう一つの方法は、チームが協力してはじめて達成できる全体目標(目標と主要な結果=OKRなど)を強調することだ。部門によっては、このOKRに、紹介数の増加や、オーガニックトラフィックの改善、従業員エンゲージメントスコアの最適化が含まれるかもしれない。

 共通の目標は、オフィス外での娯楽活動のチームビルディングでも促進できる。また、うまく設計された社会活動は、楽しい経験を提供するだけでなく、同僚たちが共通の目標に向けて肩を並べて努力するような環境をつくり出す。つまり、仕事後の軽い飲み会よりも、コラボレーションを要する料理教室に投資したほうがよい。

 (3)緊張をつながりに変える

 研究によると、職場で意見の相違が衝突に発展するのは、従業員が関係性の欠如を感じた時(過小評価されている、評価されていない、リスペクトされていないと感じる時)だ。そしてつながりの感覚が希薄なほど、意見の相違を個人的な侮辱と受け止める可能性は高まる。

 だが、意見の相違は、正しく対処すれば、多くの価値をもたらす。職場における意見の違いは、職場の機能不全を示唆するどころか、よりクリエイティブな解決策や、よりよい意思決定、より高いパフォーマンスをもたらす可能性がある