
部下に仕事を任せるメリットは大きい。部下の成長を促しつつ、自分にしかできない業務に集中できる。しかし実際は、優れたリーダーであっても、部下に任せられないケースが少なくない。その理由として近年よく見られるのが、部下の仕事を増やすことに罪悪感を覚えるというものだ。本稿では、その罪悪感を軽減し、部下に多くの仕事を任せるための方法を紹介する。
部下に仕事を任せられない理由
大多数のリーダーは、部下に仕事を任せることのメリットを理解している。チームに成長と進化の機会を与えながら、自分自身は優先度の高い仕事に集中することができる。理論的には素晴らしいアイデアだとわかっていても、優れたリーダーの多くがなかなか実践できずにいる。
リーダーが部下に仕事を任せない理由は、いくつもある。この仕事を適切に行えるのは自分だけだ、あるいは他人に説明するより自分でしてしまうほうが早い、と思い込んでいる人もいれば、頼るべきエキスパートとしての役割を手放したくない人、自分ではなくチームに注目が集まることを危惧する人もいる。しかし最近は、チームメンバーのやることリストを増やすことに罪悪感を持ち、それゆえに任せられずにいるという声を、私がコーチングしているリーダーたちからよく聞く。
アドテクノロジー企業でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるケンドラは、「仕事が山積しているのは、私も部下たちも同じです。さらに多くの仕事を頼むことに罪悪感を覚えています」と語る。
チームメンバーが幸福でいられるように気を配り、部下の仕事量を管理するのは、優れたリーダーシップといえる。しかし、罪悪感をうまくコントロールしなければ、仕事を任せられなくなり、八方ふさがりの状況に陥る。自分の仕事量が増えると、リーダーは不安症やバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥り、より価値の高い仕事ができないままになる。ひいては、守ろうとしているチームに悪影響を及ぼしかねない。従業員は信頼されていないと感じると、士気やエンゲージメントが低下し、成長する機会がなければ、離職へとつながる。
本稿では、チームを思いやりながら、罪悪感を軽減し、部下により多くの仕事を任せるための方法を紹介していく。