●「成長マインドセット」を引き出す言葉で、みずからを方向づける
成長マインドセットによる効果について研究したい場合、研究者が用いる一つの方法がある。それは、実験参加者に与える目標や課題を表現する際に、「よい」ではなく「よりよい」を連想させる言葉を使うというものだ。具体的には、「改善する」「発展する」「次第に」「進歩する」「○○になる」、そして言うまでもなく「成長する」などの言葉を使うのである。
これらの言葉は、明示的かつ暗示的に、人の思考に刺激を与えて「方向づけ」を行う。つまり、成長することこそが目標であると位置づけ、そのような目標を目指すマインドセットへの転換を促すのだ。
この方法ではまず、普段考えている自分の目標を書き出す。たとえば、「有能なコミュニケーターであること」「売上げを5%伸ばすこと」といった具合だ。
そのうえで、成長マインドセットを引き出せる言葉を一つ、あるいは複数使って、その文章を書き換える。「有能なコミュニケーターであること」は「有能なコミュニケーターになること」に、「売上げを5%伸ばすこと」は「リード顧客の幅を広げて、売上げを5%改善すること」になるかもしれない。
このように目標を設定したとしても、要求する水準を引き下げたり、パフォーマンスを上げずに妥協したりすることにはならない。研究によれば、成長マインドセットを持って目標を設定しようとする人は、そうでない人に比べて、より難易度の高いストレッチ目標を自身に課すことが多いという。
たとえば、医療用品会社の営業担当者を対象に行った研究では、強い成長マインドセットを持って仕事に臨んでいる人ほど、より野心的な売上げ目標を掲げ、より多くの努力を払い、より精力的に営業テリトリーを設定して、営業プランニングを行い、最終的により多くの製品販売に成功していた。