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不確実性の時代には、至るところで新たな障害が発生し、足元の状況は絶えず変化し続けている。何一つ確実だといえることがない状況で、高い目標設定を求められても、どうすればよいのかわからない。激しいストレスで打ちのめされていると感じていれば、なおさらだろう。そこで、筆者が提唱するのが「成長マインドセット」(グロース・マインドセット)を利用したアプローチだ。本稿では、みずからのモチベーションを引き出し、目標に向かって前進するために欠かせない2つの戦略を紹介する。

成長して前進することを目的にする

 たいていの人は、個人とチームの目標を設定する時、合理的かつエビデンスに基づいて決めたいと考える。さまざまな可能性、利用可能なリソース、行く手に待ち受ける数々の障害を慎重に考慮しつつも、適度なストレッチ目標を設定したいと思うものだ。

 しかし、何が可能かよくわからない場合、どのように目標を設定すればよいのだろうか。至るところで新たな障害が発生し、足元の状況が絶えず変化し続けているように感じられる時には、どうすべきか。ほとんどの人が、激しいストレスによって打ちのめされていると感じていて、ストレッチ目標を掲げることなど論外に思える状況ではどうなのだろうか。

 不確実性とバーンアウト(燃え尽き)の時代には、目標設定など、無意味なことに思えるかもしれないが、そんなことはない。研究によれば、高いモチベーションを引き出し、意識的に、そして無意識のレベルでも、脳のエネルギーを正しい行動に向かわせるには、私たちが置かれている現在位置と、どこへ向かおうとしているのか、目標地点を明確に理解し、適切なスピードでそこに近づけているかを把握しなくてはならない。

 私たちは目標がないと、誤った選択をしたり、行動の機会を逃したりする。問題はそれだけでない。目標を設定しない人は、自分が有能だと感じることができない。多くの心理学者によると、自分のことを有能だと感じられるかどうかは、人生に満足感とウェルビーイングをもたらす最も重要な要素だという。

 現在のように、前例のないことが起きて、しばしば気が滅入るような時代に、理にかなっていて、自分と他者のモチベーションを高めるような目標を設定するには、「成長マインドセット」(グロース・マインドセット)を持って臨まなくてはならない。

 これは「『自分はもっと変われる』と信じよう」といった類の話ではない。成長マインドセットを過度に単純化する見方はよくあるが、筆者が勧めたいのは、そのようなことではない。成長マインドセットを持つことは「成長できると信じる」というような単純な話ではなく、微妙なニュアンスを含む問題である。そして実際、そうすることの効果は大きい。

 マインドセットとは、私たちが日々行なっている仕事の根底にある大義や目的意識に関わるものだ。成長マインドセットでは、成長して前に進むことこそ、いま自分が行っていることの目的だと考える。

 以前、別の場所で指摘したことがあるが、単に「よい」状態であるだけでなく、「よりよく」なることを目指すのである。そして、成長のマインドセットに基づいた戦略と習慣を実践することで、自分が行うすべてのことにおいて成長を目指すべく、努力し続けることができる。

 成長マインドセットというレンズを通して目標設定を行えば、不確実な状態に居心地の悪さを感じることなく、より長期的な目標を持つことを受け入れやすくなる。本稿では、そのような目標設定を行うために有効な2つの戦略を紹介する。これらの戦略は、個人レベルでも、チームレベルでも活用できるものだ。