2. 変化をもたらす要素の相互作用
予測を難しくしているのは、変化をもたらす要素が増えていることだけではない。さまざまな要素の間で、相互作用が起こるケースも多くなっている。そのような相互作用があるために、ある領域における動向がほかの領域における変化を加速させるケースがある。
今日の世界では、グローバル化の進展と、通信・データ処理技術の進化が組み合わさることにより、このような相互作用が強まっている。その影響は、経済全体に波及する。一つの領域で起きた変化がほかの多くの領域に影響を及ぼす傾向は、20年前より強まっているのだ。
再び自動車業界を見てみよう。いま旧来型の自動車メーカーは、いくつもの重要な変化に直面している。自動車メーカーのビジネスに影響を及ぼす変化が、いくつも生まれつつある。
たとえば、バッテリー電気自動車の登場、ディーラーではなく、メーカーから直接購入する消費者が増えているといった購買行動の変化が挙げられる。さらに、自動運転車の開発、自動車産業への新規参入と新しいビジネスモデルの出現、ライドシェアやその他の新しい自動車所有の形態への移行、政府の奨励・助成制度の変更、原油価格の変動、サプライチェーンの不安定化など、さまざまな変化が起きている。
ここに挙げた変化の多くは、互いに関連している。たとえば、自動運転車の商用化が早い時期に実現すれば、ライドシェアの経済性が改善して、新車の需要にも影響が及ぶだろう。電気自動車に対する政府の助成制度が大々的に導入されれば、バッテリー電気自動車の普及に拍車が掛かり、内燃エンジン車を販売することはこれまでより難しくなり、ディーラーはアフターサービスで儲けにくくなる。
そして、ほとんどの消費者がメーカーから自動車を購入するようになれば、ディーラーに土台を置く流通モデルは、存続を脅かされる。それにより被る影響は、旧来型の自動車メーカーがことのほか大きいはずだ。
要するに、自動車業界の未来は、予測不可能な部分が極めて大きい。変化を引き起こすさまざまな要素と、それらによる相互作用がともに増大した結果、旧来型の自動車メーカーは、有効な戦略を編み出すことがいっそう難しくなりつつある。