将来予測を困難にする
2つの要因が合わさった結果

 本稿で論じてきた2つの要因が合わさって、予測不可能性がいっそう高まる状況を理解するには、道路の交通量を予測する状況を思い浮かべるとよいだろう。

 明日の朝、あなたが自宅からオフィスへ自動車で出勤する際の最善のルートを考えるとする。この場合、考慮に入れなくてはならない要素は非常に多い。あなたの通勤時間帯の平均的な交通量、道路の通行止めの有無、交通事故に関する情報、天候などである。しかし、これらの要素のほとんどはある程度予測可能なので、関連する要素の組み合わせを検討して、最善と思われるルートを選ぶことができる。

 では、10年後に自宅からオフィスへ向かう時の最善のルートを選べ、と言われた場合はどうか。予測は格段に難しくなる。今後10年の間に、多くのことが変わる可能性があるからだ。

 新しい道路が建設されるかもしれないし、超高速鉄道が登場していないとも限らない。オフィスに出勤する人の数が減っている可能性もある。あなた自身が引っ越したり、転職していたりすることもありうる。こうした要素が組み合わさる結果、10年先の最善の通勤ルートを予測することは、ほぼ不可能に近い。予測しようと試みても、予測が当たらない可能性のほうが高い。

 いまほとんどの企業が置かれているのは、まさにこのような状況だ。今日の企業はいくつもの側面で変化にさらされており、そうした変化の多くは互いに関連している。そのような激変期に、ビジネスリーダーたちは、遠い将来にわたって自社の収益性と成長力に影響を与えるような選択を迫られているのだ。