Lucy Jones

会議前に、資料を読んだり、質問への回答を用意するといったプレワーク(事前作業)をしっかりと行えている人は、あまり多くない。忙しいメンバーが参加する会議を有意義なものにするには、会議の冒頭で、議論の土台になる資料をみんなで黙読する時間を持つ(会議の中にプレワークを組み込む)ことが重要だと筆者は提案する。これは、アマゾン・ドットコムで取り入れられている手法でもある。本稿では、会議の中で資料を黙読する意義とともに、議論を促す効果的な資料のつくり方を紹介する。

会議の中にプレワークを組み込む

 一つの会議を終え、次に行われる会議のズームのリンクを慌てて探し、ギリギリの時間に「参加」をクリックして、ほっと胸をなでおろす。しかし、それもつかの間、必要なプレワーク(事前作業)を怠っていたことに気づく。資料を読む、契約書を見直す、あるいは議論の土台となる重要な質問への回答を用意する、といったことだ。

 誰もがこの「プレワーク」という言葉を耳にすると、うなり声を上げ、目を丸くし、さらにプレワークを怠っていたと気づいた瞬間、「もうだめだ」という気持ちになる。このように、プレワークをしていない人があまりに多いため、筆者の知る経営幹部の多くは従業員にこの行為を期待しなくなっている。

 しかし、諦める必要はない。会議の中にプレワークを組み込み、参加者に最初の5~20分間、議論を促すために入念な準備を経てつくられた資料を黙読させるのだ。これにより、リーダーはプレワークの新たな概念をつくり上げるだけでなく、チームが集まることの本質的な意味を再考できる。

懐疑的な見方に反論する

 プレワークの時間を会議の中で確保するように提案すると、多くの人が誤解し、会議がさらに長くなるだろうと考える。しかし、そのようなことはない。

 たしかに、従業員たちはすでに会議の多さに悩まされている。最近行われた調査によると、会議の70%は従業員がほかの仕事をすべて終わらせる妨げになっているという。

 これを念頭に置いたうえで、プレワークへの理解を深めるため、会議中にプレワークの時間を確保しているという人々に話を聞いた。すると、ほとんどの人が会議は長引いていないどころか、より集中できるようになったと回答した。

 共有された資料をもとに足並みを揃えることができれば、全員が共通の認識を持ったうえで議論を始めることができる。プレワークを行っていない人に情報を提供したり、文面で簡単に答えられるお決まりの質問に時間を割く必要がなくなる。同様に重要なのは、準備をして来た人の時間を無駄にしないことだ。

 議論を繰り返したり、報告したり、そのほか過去のことをくどくど話したりする代わりに、メンバーは現在や未来につながる行動に貴重な時間を割くことができる。たとえば、「決める」「採決を取る」「足並みを揃える」「承認する」といった行動だ。このような行動を重視する会議は、生産的になりやすい。