議論の土台になる「資料」の重要性

 綿密に考え抜かれていながらも簡潔にまとめられた、チームで共有する資料を作成するのは、会議を取り仕切るリーダーにとって大きな負担になる。これは、しかるべきことだ。特に、従業員が会議の多さに悩んでいる場合、会議を招集する人は、会議から何を得たいのかを明確に認識していなければならない。

 米国における求人件数が1120万件に上るいま、リーダーには組織の既存人材を最大限に活用することが求められている。会議の主催者が時間を割いて資料を作成することで、会議の目的が明確になり、その結果、成果が最大化される。

 会議の目的は、会議室の入り口にいる「門番」のようなものだと考えてほしい。主催者が明確な目的を持っていなければ、メンバーの時間を割く価値があるかどうか、考え直すべきかもしれない。プレワークを会議に組み込むのは、パーパスドリブンな会議にするためだ。

 プレワークを会議に組み込んでいる企業として最も有名なのが、アマゾン・ドットコムである。同社では、各会議の最初の数分間(あるいは最初の30分以上)は、議論の土台となる資料を確認することに費やされる。

 同社の創業者であるジェフ・ベゾスは、この資料について「その後に、よい議論ができる環境をつくるためのもの」と説明している。

「なぜ資料を会議室で読むかというと、幹部たちは、高校生さながら、まるで資料を読んだかのように、はったりを利かせて会議に臨むからです。実際は、多忙であるため、(会議中に)資料を読む時間を確保しなければなりません」

 資料が必要なのは、経営幹部だけではない。筆者がインタビューしたプレワークを会議に組み込んでいる人々の中には、アマゾンのチームメンバーも何人かいた。彼らによれば、最初に資料を黙読する時間をわずかでも設けない会議は稀だという。

 人事部門のテクニカルアドバイザーは、次のように述べる。

「資料に書き出すことによって、考えを明確にすることができます。会議を招集する人は、事前によく考え、適切なデータを集めています。そのおかげで、議論が始まるとすぐに、問題の解決に取りかかることができるのです」