ここまでをまとめると、希望を持つ文化は組織を活性化し、思いもよらないような成果を生み出すこともあれば、望ましくない出来事や結果が生じた時には、モチベーションを吹き飛ばしてしまうこともあるということだ。
では、組織が希望という感情を前向きに活用し、落とし穴を避けるにはどうすればよいのだろうか。
重要だが複雑な問題を解決しようとする時、多くの組織は希望を呼び起こそうとするが、希望を維持するには努力が必要であることを認識しなければならない。希望を持つ文化が広がり、そのレベルが高まることもあるが、いったん失われれば、組織の管理が困難になることを、筆者らは明らかにした。もしこのような浮き沈みを予測できれば、目的達成に向けて、組織が直面する困難にうまく備えることができるかもしれない。
野心的な目標を含めて、将来のビジョンを策定する際、リーダーは目標に向かう過程について議論すべきだ。一筋縄ではいかず、疑問が生じ、挫折もするだろう。従業員に対して、それはプロセスの一部として自然なことであると受け止めるように促すことで、計画が思い通りに進まなかった時のショックや失望を和らげられるかもしれない。さらには、絶望に屈することなく、そのような状況を乗り越えることもできるようになるかもしれない。
希望を持つ文化をより確固たるものにするには、組織が希望を持つことについて、より現実的な形で推し進める必要がある。たとえば、組織が困難や挫折に直面した時には、それでもまだ可能なことは何かを議論する。言い換えれば、ドアが一つ閉じたとしても、まだ開いているドアを従業員が見失わないようにするのだ。
同様に、困難な時期には、自分たちが成長し、目標達成に向けて前向きに進んでいた時のことを、従業員に思い出させることもできる。そのようなナラティブは、失敗と成功は交互に訪れること、そして目標に向かって努力し続ければ、よりよい日々が待っていることを強調することで、従業員が希望を取り戻す助けになるかもしれない。
全体的には、従業員が希望の「高まり」と「落ち込み」の両方を受け入れられるように支援し、希望の本質についてより現実的なナラティブを駆使することで、組織は極めて困難な問題に対して、上手に対処し続けることができるだろう。
筆者らの研究は、組織において希望が果たす役割を理解するための第一歩を提示するものだが、それを効果的に活用することで、組織を目標達成に向けて推進させることができると信じている。ただし、組織が困難な時期を乗り越えるには、希望がもたらす問題を認識し、適切に対処しなければならない。
筆者らの希望は、組織がこのガイダンスに従うことで、職場において希望を適切な方法で呼び起こし、管理する方法を学ぶことだ。そうすれば、企業や社会が大きな課題に直面しても、生き残り、さらには成功する可能性が高まるだろう。
"Research: The Complicated Role of Hope in the Workplace," HBR.org, October 18, 2022.