データプロダクトはどのように開発され、使われるのかを考えてみよう。
データプロダクト管理に関するコンサルタントで、以前にみずからデータプロダクトのリーダーを務めたジェームズ・スティーブンソンは次のように述べる。
データプロダクトはほとんどの場合、実用最小限の製品(MVP:minimum viable product)のアプローチ──最初に顧客やユーザーの関心を引くために、最も基本的な要素のみの製品をつくること──から始まる。その後、プロダクトの新バージョンを繰り返し構築できるよう、継続的なイテレーションのサイクルが必要となる。
ビスタのCDOであるクラップドアは、このプロセスを彼独特の言葉で表現する。最初の目標は「好まれる最小限の製品」(minimum lovable product)の開発とし、その後にスケール可能なプロダクトの開発を目指すべきだと言う。社内外の「顧客」は往々にして、MVPを好まないことにクラップドアは気づいた。それらは洗練さと機能性を欠くためであり、ゆえに彼は「顧客」に好まれるものをつくることにこだわっている。
データプロダクト管理の責務は、実装をもって終了ではない。データプロダクトマネジャーは四半期ベースで、データプロダクトの継続的な使用と価値を保証して測定する責任がある。プロダクトの顧客が社内であれ社外であれ同様だ。
どのような人材が優れたデータプロダクトマネジャーになるのか
データプロダクト管理を支持する人々の間で一致する意見として、データプロダクトマネジャーにはビジネス志向とデータ・アナリティクスへの精通の両方が必要とされ、多様なスキルのチームを主導できることも求められる。
また、データサイエンティストは、優れたデータプロダクトマネジャーにならない場合が多い、という点でも関係者らは同意する。モデルとデータの適合と最適化を過度に重視するためである。ただしクラップドアの発見によれば、データサイエンティストは、高度に専門的なデータプロダクトを扱う場合は役立つという。
では、プロフェッショナルたちがデータプロダクトマネジャーに求めるものは何だろうか。
クラップドアは場合に応じて、プロダクトに必要な専門知識を持つデータプロダクトマネジャーを求める。たとえば、ダイナミックプライシング、メディアミックスのモデル、アトリビューションモデル、製造分析といった専門分野だ。
そのほかに、ソフトウェア企業の経験豊富なプロダクトマネジャーも、ビスタのデータプロダクトマネジャー人材として頼りになる。彼らはたいていプロセスの管理方法を知っている、とクラップドアは言う。
ジェームズ・スティーブンソンの主張によれば、データプロダクトマネジャーは一般的な製品管理の経験をある程度有しているべきだという。データサイエンティストは意思決定を独断で下すことが多すぎるため、データプロダクトマネジャーに配置することを避けるべきだと彼は考えている。
また、自分の役割におけるデータ的側面を──たとえそれが最重要ではないとしても──理解している必要がある。スティーブンソンは、プロダクトの取り組みには3人の同等のリーダーが必要だと考えている。データプロダクトマネジャー、データサイエンティスト、エンジニアリングリードだ。同等の権限を付与されたこれら3人のリーダーは、健全な緊張関係にあるべきだと彼は言う。自分の望むものを求めて闘いながらも、互いに歩み寄る姿勢も持つ。いずれか1人のリーダーが優位に立ってはならない。
リージョンズバンクのミスラが設けた「データプロダクトパートナー」という役割は、同行でそれぞれの部門のデータプロダクトマネジャーとして機能する。この職には、データや高度なアナリティクスの包括的な活用に責任を負う新たな人材を引き入れる必要があった。
データプロダクトパートナーが特に重視するのは、プロダクトがどのように導入・使用されるのか、ユーザーインターフェースはどう見えるか、ユーザーの人数は何人か、自社への価値をどのように創出しているか、である。
彼らはスタッフ会議に参加し、ビジネスの優先事項を把握する。そしてビジネス上のニーズおよび機会と、それらに対応するソリューションの間で双方向の翻訳をする。彼らの大半はビジネス部門の出身だが、技術志向と分析志向も兼ね備えている。
デジタル化、大量のデータ、それを解釈できるアナリティクスとAIによって生まれた経済における、新たな職の一つがデータプロダクトマネジャーである。データサイエンティストやデータエンジニアといった、より専門化された技術職が導入される中、幅広いビジネススキルの持ち主が必要とされている。異なる役割の人々と横断的に働き、彼らを効果的なチームにまとめ上げ、自社への価値提供を実現させることができる人材だ。
データ、アナリティクス、AIに関するスキルが高度に専門化しても、ゼネラリストの必要性はけっしてなくならないようだ。
"Why Your Company Needs Data-Product Managers," HBR.org, October 13, 2022.