リンクトインがコロナ禍の職場設計で重視したもの
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サマリー:働き方はコロナ禍を経て大きく変化した。リンクトインは、パンデミック前にシリコンバレーの本社の再設計に着手し、パンデミックを通して多くの洞察を得た。本稿では、リンクトインの職場設計を担当した筆者が、従業... もっと見る員を惹き付ける職場に必要な要素や考え方を紹介する。従業員の多様性を考慮し、テストを繰り返して職場環境の改善に継続して取り組むことが重要だと説く。 閉じる

従業員のウェルビーイングを後押しする労働環境の構築

 私たちはいま、コロナ禍によって引き起こされた壮大な働き方実験の新たな段階に入っている。ギャラップによれば、リモートで勤務できる人々の過半数は、今後も少なくとも部分的にはリモートワークを予定または希望している。このような人々を抱える組織にとっての目標は明白だ。ハイブリッドワークをいま以上に実行可能かつ持続可能にすることである。

 筆者の一人はリンクトインの従業員、もう一人はNBBJのコンサルタントである。筆者らが常に目指しているのは、職場の傾向をより深く理解し、従業員とユーザー基盤の両方がそれらの傾向に対応できるよう支援することだ。最近では、シリコンバレーにあるリンクトインの29エーカー(1エーカーは4万3560平方フィート)に及ぶ既存キャンパス内に、25万平方フィートのグローバル本社(通称B1)を設計する取り組みの中で、我々はハイブリッドワークに関する新たな考え方を試してきた。

 取り組みが始まったのはコロナ禍の前である。労働の歴史という長い時間軸の中でも、コロナ禍による影響は大きく、短期間で働き方は変化した。我々は、コロナ禍を経た世界に合わせて計画を調整し、協働してきた。このプロセスでは研究、デザイン、そして現在では新たなスペース(およびその使用をめぐる規範)の導入を通じて、テストと改良が行われている。すなわち、会社を前進させ続けながら従業員のウェルビーイングを後押しできるよう、対面とハイブリッドワークとリモートワークのバランスを取るという試みだ。

 以下は、現在までに我々が学んだ3つの重要な教訓である。

あらゆる利用シーンに向けてオフィスを最適化する

 オフィスは、人々のさまざまな役割と志向に対応すべきである。子育て中の従業員であれば、雑音や家庭での責任から逃れ、一人で仕事に集中できるワークステーションを求めているかもしれない。Z世代の従業員の多くにとって、オフィスへの復帰は、コロナ禍の期間にほとんど失われていたもの──対面でのメンタリング、学習機会、成長──を得るための歓迎すべき機会となる。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーの定義によれば、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは「ネットワーク、人間関係、共有規範、信頼の存在」である。ほとんどの従業員は、過去2年の間に損なわれたソーシャルキャピタルを築く、または回復させるための場所を探し求めている。

 だからこそリンクトインの新本社は、集中、コラボレーション、学習、交流、そして休息という利用シーンのすべてに対応するスペースを取り入れている。静かな図書館から活気あふれるカフェまでさまざまな場を提供し、従業員はいつでも好きな時に好きな場所を選んで働くことができる。

 ロックダウン期間中に我々が学んだのは、従業員は個人的な主体性をより多く持つほど生産性が高まるということだ。職場設計は、従業員が自分なりの心地よいルーチンとリズムを見出せるものでなくてはならない。在宅ワークが適切と思われる場合も含めてだ。

 リンクトインのセールスチームのあるメンバーはこう述べた。「1日の大半を会議室で過ごすことになる日は、オフィスに出社するのは合理的ではありません。そのため私は、チームと非公式に会う時間が取れる日に出社するよう計画を立てます」

 コロナ禍以前の本社設計に加えた最大の変更の一つとして、従来のワークステーションの数を約40%減らし、代わりに数十のシーティングエリアを設けた。個々のチームの典型的な活動に合わせてレイアウトされた、それぞれ異なる「ネイバーフッド」(領域)である。交流やグループでの話し合いの場として機能するリビングルームのようなエリアもあれば、一人での仕事や2人での打ち合わせのために座る場所を設けたエリアもある。

 建物全体は、ワークスタイルの変化を各階に反映する形を取っている。最も交流的な仕事場(コワーキングスペースと、カフェテリアやコーヒーショップ)は地上階に、単独での集中を最も要する仕事場は最上階にある。