中国名門大学と連携、交流を深める
梅村 いまや留学生マーケットの主役は中国人であり、欧米の大学も中国人をターゲットにしたカリキュラムをつくっています。また、欧米の大学では、中国人留学生の人数が経営上でも大きなインパクトを持っており、たとえば、ミシガン州立大学では、地元のミシガン州出身の学生には学費を低く設定し、一方で中国人をはじめとした留学生の学費は地元学生に比して高く設定することで、大学全体で経営の健全化を図っています。

アクセンチュア
ビジネスコンサルティング本部
公共サービス・医療健康プラクティス ストラテジーグループ統括
マネジング・ディレクター
Toru Umemura
2007年アクセンチュア入社。中央官公庁・地方自治体・学校法人をはじめとする公共機関の成長戦略、再編戦略、財務戦略立案やデジタル・トランスフォーメーションなどを数多く手がけ、近年は、国立大学統合・再編など、日本初となる取り組みに関わるプロジェクト責任者も歴任。現在、ストラテジーグループの公共サービス・医療健康プラクティスの統括や社会保障領域チームにおける労働領域の統括を務める。
古屋 オーストラリアでも中国人留学生が来ないと、存立が危うくなる大学が少なくありません。それくらい依存度が高まっています。
山梨学院大学では2019年、中国国家重点大学の一つであり、中国のトップ10に入る西安交通大学とダブルディグリー協定を締結しました。そして、2022年4月にはダブルディグリープログラムの第1期生が入学しました。同プログラムの学生は、1年次と4年次を山梨学院大学で、2〜3年次を西安交通大学で学び、卒業時には両大学の学位が授与されます。
また、精華大学と並び中国のトップ大学と評価されている北京大学の中国語学部と2021年7月、学術交流協定を結びました。2022年度から北京大学中国語学部の教員が山梨学院大学に派遣され、中国文化の講義を担当しています。これは主に中国人留学生向けの講義ですが、中国語のスキルが一定以上あれば日本人でも履修は可能です。
こうした中国の名門大学との学術面、教育面での連携は、山梨学院大学を目指す中国の高校生にとって、大きな信頼感につながります。
梅村 今後も、中国の大学とのダブルディグリーやジョイントディグリーを増やしていく予定ですか。
古屋 そのつもりです。中国ではトップ同士の人脈が大事なので、私もコロナ禍前は1年のうち延べ2カ月くらいは中国に出張していました。いまは副学長(国際担当)の張華さんが中心となって、中国の大学との交渉を進めています。
円安の進行で、中国人留学生にとって日本の大学の授業料は実質的に下がっています。それも我々にとっては追い風です。これからは、中国語で受けられる授業をどんどん増やしていく方針です。
教育実践の知見を海外に展開していくことで、
成長のチャンスは広がる
梅村 iCLAの新設や留学生の受入強化に加えて、海外に現地法人を設立し、現地学校の買収や新設など、グローバルな事業展開も始められていますね。教育産業は人口連動型の側面があり、少子化が進む日本においては市場がシュリンク傾向にあります。一方、人口が増加傾向にあるアジア地域などは、教育業界は成長産業と見られています。
古屋 その通りです。私たちは日本だけでなく世界に目を向けており、中国、インド、ASEANなどの教育マーケットはこれから拡大していくととらえています。日本で培った我々の教育実践の知見を海外に展開していくことで、成長のチャンスは大きく広がります。
そこで、法人本部に経営戦略室を設置し、ターゲットとする市場ごとに中国事業部やインド事業部などの事業部を配置しました。各事業部では、各国の教育制度や現地の教育ニーズをリサーチしています。そして、現地法人が当該国の政府や企業などと協力しながら、現地学校の買収や新設、運営事業に取り組んでいます。
中国ではすでに、幼稚園と保育園の事業を始めており、中国法人はその運営のほか、山梨学院大学の中国人留学生の募集業務なども行っています。
インドでも現地法人を正式に発足させ、インターナショナルスクールと幼稚園の開設準備を進めています。そのほか、ベトナムにおいても現地法人を設立し、現地幼稚園の運営管理を行っています。