2. 白紙の状態からスタートする

 リセットの参加者には、2つのグループのどちらかに入ってもらった。一つ目は、フル参加、名付けて「フル・ドゥームズデイ」グループ。48時間先までの予定表から一斉に会議を削除し、各会議を吟味した後、再び予定表を埋めてもらう。もう一つのグループは、「ライト」バージョン、つまり48時間先まで会議の一斉削除は行わず、予定表にある各会議を評価するのみとした。

 どちらのグループも会議時間を削減できたが、フル・ドゥームズデイのグループが毎月1人当たり平均5時間削減できたのに対し、ライトグループは3時間に留まった。

 この違いについてアダムスに尋ねたところ、前者は「白紙状態」になったことによって会議を行うペースが落ち、その必要性や見直しの可能性について深く考えるようになったが、後者はそこまでペースを落とさなかったことが影響したのだろうと推察した。アダムスは、ノーベル賞を受賞した心理学者であるダニエル・カーネマンが、著書『ファスト&スロー』の中で記している「人はいったん立ち止まって、深く熟考することによって、新しいアイデアを生み出し、古い習慣を捨てる可能性が高くなる」という内容から、その根拠を示している。

 アダムスの主張は、フル・ドゥームズデイグループの回答と一致している。彼らは、48時間の間に、どの会議を削除し、どの会議を戻すかを考えただけでなく、この期間を利用して、残した会議の進め方に対する思い込みを「一掃」したと回答している。

3. データを使ってどの会議を削るかを判断する

 ドゥームズデイとリセットは、どちらもデータ駆動型の研究である。それぞれの研究の初期段階において、数字を弾き出し、人がどれだけ会議で時間を浪費しているかを示したおかげで、多くの人がすすんで調査に参加してくれることになった。

 ドゥームズデイのパイロットから得た学びの一つは、参加者が各会議の価値を評価するのに苦労していたことだった。そこで「リセット」では、単純なシステムを開発した。各定例会議を2つの側面から3段階で評価してもらったのだ。

・各会議に必要な労力(事前準備、実際の会議時間、フォローアップなど)
・目標達成における各会議の価値

 参加者からは、この評価基準が簡単で、各会議について深く考えるきっかけになったため、特に有用だったという感想を得た。

 その結果を受け、筆者らはミーティング・リセットに基づくモデルを組み立て、80%以上の精度で価値の低い会議を予測できるようにした。このモデルは、会議の長さ、規模、曜日、名称などの要素を考慮する。

 月曜日の会議は、最も価値があると評価された。水曜日の会議は、アサナの「会議禁止の水曜日」と重なり、最も価値が低い。これはおそらく、その日に会議の予定を入れないという会社の明確な規定に違反するのが許せないからだろう。また、具体的なプロジェクト名やチーム名を冠した会議は最も価値があると評価され、曖昧な「情報共有」や「コーヒーチャット」は最も価値がないと評価された。

4. ムーブメントを起こす

 会議の立て直しは、チーム、部署全体、組織全体でムーブメントとして感じられるように、みんなでいっせいに行うと実現しやすい。ドロップボックスでの会議の一斉削除とは異なり、アサナのドゥームズデイとリセットはトップダウンの改革ではなかった。アサナの社員にはそのような取り組みに参加するかどうか選択する権利があり、会議を削減したり刷新したりするアイデアを共有しながら、互いに励まし合った。

 どんな運動でもそうだが、この時も、意欲的な人もいれば、しぶしぶ参加する人、あるいは参加しない人もいた。しかし、参加しなかった人も自身の負荷が軽くなり、メリットを得られた。また、最初は参加に抵抗を示した人も、参加者から話を聞いたり、効果を実感したりすることで、リセットに参加するようになった。