会議を一からつくり直す

 ワーク・イノベーション・ラボでは、会議に関する研究の足掛かりとして、まずフランチェスカをはじめとするマーケティングチームが参加した、パイロットスタディ「ミーティング・ドゥームズデイ」を実施した。 その結果、各参加者が1カ月当たり、平均で11時間の会議を削減したことがわかった。フランチェスカは、1カ月当たり32時間削減し、ドゥームズデイのMVPになった。

 筆者らは、ミーティング・ドゥームズデイに続いて、「ミーティング・リセット」を実施した。アサナのマーケティングチームのメンバー60人を調査し、1160件の定例会議を評価した。

 その結果、ドゥームズデイほど劇的ではなかったものの、大きな時間削減効果があった。この60人は、会議の廃止と見直しにより、1カ月当たり合計265時間の会議を削減した。筆者らは、ドゥームズデイとリセットから得た学びをもとに、ほかの企業が会議文化を見直す際に参考にできるマニュアル「会議改善プレイブック」を作成した。

会議を立て直す方法

 このプレイブックでは、正しく機能していない会議を特定し、削除し、修正する方法をステップごとに紹介している。ワーク・イノベーション・ラボで行った会議の調査結果を分析したところ、その成功には5つの要素が必要であることがわかった。

1. 引き算志向になる

 人間は通常、問題解決の手段として、何かを取り去るより何かを足すことを選択する。バージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネス准教授のガブリエル・アダムスらは、一連の研究を通じて、「引き算の軽視」が蔓延していることを明らかにした。この「足し算病」は、会議にも及んでいる。人は、すでに埋まっている予定表に、あまり考えもせず、どんどん予定を積み重ねてしまうのだ。
 
 アダムスの研究によると、人は引き算をするように言われ、そのために思考を一時的に止めると、それよって認知装置の一部が外れ、引き算志向になれるという。この志向を促す方法としては、バージニア大学教授のライディ・クロッツ(Subtract(未訳)の著者)とサットンが提案している「半分のルール」のような、シンプルな方法がある。すべての会議の回数、長さ、規模などを50%カットしたと想像してみよう。すると、どうなるだろうか。

 ドゥームズデイでは、この志向を活性化させた。自分の予定を入れ直す時に、参加者は多くの引き算を行った。価値の低い会議は、永久に取り除くことにした。また、それ以外の会議については、時間を短縮したり、頻度を変更したりした。たとえば、30分の会議を25分にしたり、週1回だった会議を月1回にしたりした。