3. 営業マネジャーに営業ではなく、計画に集中させる

 景気後退期には、営業メンバー総動員で目標達成に挑みがちだ。取引案件を勝ち取るために、マネジャーが現場に出て、営業や契約に直接携わることが増える。結局のところ、マネジャーの多くは、顧客との協働に成功したからこそ現在のポジションに昇進したのだし、市場が厳しい時は、最高の人材を現場に送り出すことが安全策だと思えるかもしれない。

 これには2つのマイナス面がある。まず、マネジャーが現場に出ると、営業メンバーの役割が小さくなり、担当顧客における存在感が薄くなる。第2に、マネジャーがコーチの役割をしなくなる。しかし、彼らがコーチの役割を果たしたほうが、ビジネスの成功に大きなインパクトを与えることができる。コーチは、選手の活躍がいま一つでも、フィールドに出て行ったりしないものだ。コーチは、ゲームプランや戦略を練ったり、スキルを伸ばしたり、人材を確保したりするなど、選手が勝つ能力を高めることに集中する。強力で、敏捷で、戦略的な営業チームを育てることが、不況時にビジネスに勝つうえで重要である。

 したがって、あなたの会社の営業マネジャーには、人材開発に専念するよう促そう。彼らは、商談前プランニングと商談後レビューで、商談に大きな影響を与えることができる。

商談前プランニング

 プランニングの時間は、何と言って売り込むかなどを考える商談のリハーサルになってしまいがちだ。そうではなく、営業マネジャーはコンサルティング的なプロセスを重視すべきである。つまり、クライアントに何を質問し、どこで価値を生み出し、クライアントのニーズや目標をどう考えるかを営業担当者たちにコーチングするのだ。これは、単に購入品の決定に影響力を持つ人物(多くの営業担当者にとって気楽な相手)だけでなく、意思決定権を持つ人物とも関与しているかどうかを確認する機会になる。

商談後レビュー

 営業マネジャーは、何が効果的で、何がうまくいかなかったかを考えて軌道修正し、次の機会につながるモデルをつくる必要がある。商談後レビューは、成績やうまくいった(またはいかなかった)行動について、営業担当者にフィードバックをしたり、製品に関する知識をつけさせたり、あなたの会社のソリューションが顧客にどのように役に立つのかについて理解を深めさせたりする時間だ。スポーツチームが過去の試合の映像を見直すのと同じように、プロセスやスキルや戦略に重点を置いた思慮深いレビューは、次の成績アップにつながるだろう。

 営業マネジャーが、営業サイクルのこの2つの部分に重点を置くことで、顧客と重要なやり取りのたびに、軌道修正や調整を行えるようになるだろう。それを営業組織全体に広げれば、より効果的に成績が改善される。

「上げ潮はすべての船を持ち上げる」(好況はあらゆる人に恩恵を与える)という格言はよく知られているが、景気が悪くなったからといって、あなたの会社が必ずしも経営不振に陥るわけではない。厳しい経済環境の中でも、多くの企業が売上げを伸ばし、利益を拡大し、新製品の発売を成功させている。本稿で示した戦略に力を入れれば、あなたの会社もその一つになれるはずだ。


"Adapting Your Sales Approach in a Downturn," HBR.org, October 31, 2022.