2. 価格重視の営業サイクルから脱却する

 売り手が犯す最大の過ちの一つは、あまりにも早い段階で条件の交渉に入ってしまうことだ。景気が悪い時は、顧客はより決断をためらい、売り手はより数字を上げようと焦るため、この傾向が強くなる。また、企業が予算を大幅に削減する時は、顧客も売り手も、最も重要な要素として価格に注目しがちだ。しかし、値下げをしても、顧客の支出に対する警戒感はぬぐえないことが多い。

 リーダーは、この問題に取り組むことも重要である。営業チームと連携し、適切な取引を行う重要性を伝えよう。値引きが販売戦略にならないようにするために、リーダーがこの問題を注視し、エネルギーをそそぐ必要がある。

 筆者が一緒に仕事をした、あるMRO(保守・修理・オペレーション)用品会社は、自動車工場で組み立てラインの部品が動かないように押さえる留め具を販売していた。彼らは、安価な留め具を使うと、悲惨な状態に陥ることを顧客に示した。安価な留め具は、数万ドルもの経費削減につながるかもしれないが、一つでも壊れてしまうと数時間もラインをストップさせるおそれがある。その被害額は、1時間当たり120万ドルにも達する。コモディティ商品の場合、成約へとつながる営業トークのテーマは、価格ではなく、リスクなのだ。

 あなたの会社の商品価格が市場において妥当なものなら、値引きは利幅を下げるだけである。ほとんどのB2Bの取引は、価格以外にも多くの要素が絡んでいる。業績だけでなく、品質や時間の節約、生産性の向上も判断の基準になる。さらに、統合(インテグレーション)、簡素化、拡張性、信頼性といった要素を加えれば、営業チームは顧客の目標達成を支援するという提案によって、より強力な契約を結ぶことができるのだ。