デジタル監視は従業員にどう影響するか
当然ながら、新入社員がデジタルシステムに接するのは、採用プロセスが最後ではない。キーストローク追跡アプリからGPS監視用ウェアラブル機器まで、従業員を監視するツールは、この数年で急増している。これらのツールによって、効率性と透明性が高まると推進派が称える一方で、最近の研究はやや異なる実態を示している。
デジタル監視は従業員と雇用主の双方にとってマイナスとなりうる
ある研究チームが50以上の異なる学術研究の結果をメタ分析したところ、デジタル監視されることで、従業員の職務満足度は下がり、ストレスは増加することが明らかになった。
同チームのさらなる発見によれば、監視はパフォーマンスには何も影響を与えないが、従業員が非生産的な行動を取る可能性はわずかに高まる。たとえば、期待を下回る量の仕事しかしない、リソースを無駄にする、同僚や上司を侮辱するなど、といった行動だ。
これは、最近発表されたほかの研究結果とも一致する。従業員は監視されると、自分の行動に対する責任感が低下し、規則違反をするおそれが高まることが同研究で示唆されている。
監視されることで、エンゲージメントが高まる可能性もある
しかしながら、効果的な監視であれば、プラスの効果がある。高等教育機関で働く200人以上の従業員のデータを分析した研究では、デジタル的な方法によるパフォーマンスの監視によって従業員のエンゲージメントが向上する可能性があるとわかった。
なぜなら、デジタルツールは、従来型の監視システムよりも公平であると認識される傾向があるからだ。そのため、従業員が組織と自分との一体感をより強く持つようになり、仕事への熱中とエンゲージメントが高まるという。
ロボットと一緒に働くことで何が起きているか
デジタルツールに監視されるだけでなく、従業員は自動化システムとともに作業したり、助言を受けたり、管理までされたりする可能性が高まっている。個人レベルで見ていくと、ロボットという新たな同僚と働く従業員に対し、影響を与えうる複数の要因が、研究から明らかになっている。
自動化システムが「本物だ」と感じると、人はよい反応を示す
チャットボットやレコメンデーションエンジンといった自動化ツールを使用する場合、真正性(本物らしさ、真実味)が重要だ。ある研究チームは5つの調査を通じて、次のことを発見した。ツールに真正性がある場合──特に、それを開発した人間に関する情報が強調されている場合、人は特にポジティブな反応を示す。
反対に、自動化技術に人間が持つような特徴を加えて擬人化すると、むしろ真正性が低下し、それに接する人の体験の質は下がるという。
別の調査では、アルゴリズムに管理される状況で、同様の結果が示されている。労働者はアルゴリズムの管理下にある時──たとえばウーバーのアルゴリズムは、仕事の割り当てや、パフォーマンスへのフィードバック、その他の管理上の諸判断を自動的に行う──ロボットのインターフェースが擬人化されていると、ネガティブなフィードバックに対して怒りの感情を持ちやすい。
なぜなら、私たちは無意識のうちに、人間に似たシステムに主体性を感じやすくなり、ネガティブなフィードバックをくれた「張本人」はそのシステムであると考えるようになるからだ。
ある種の意思決定に関しては、アルゴリズムからの助言を望む
ほかに最近行われた3つの調査では、従業員が自動化ツールからの助言を受け入れることに、抵抗がないかどうかを探っている。ある論文によれば、人は予測と推測に関しては、人間よりもアルゴリズムから助言を受けることを好むが、それらの予測をもとに意思決定を行う際には、人間から助言を受けることを望む。
一方、別に実施された実験では、人は権限を強く維持したい意思決定事項に関しては、人間よりもAIに意思決定権を委ねたいと考える場合が多いとわかった。
加えて、人はAIによる意思決定の理由と方法を理解したいと考えていることも、研究で示唆されている。ある大病院で行われた、AI診断ツールの使用について検証したフィールド調査では、AIからの情報が人間の初期判断と異なり、その明確な理由が提示されない場合、医療専門家がその情報を取り入れる可能性は低かった。しかし、AIが生成した診断に説明が伴っている場合、医師がそれらを参考にする可能性は格段に高まった。