嘘の伝染を防ぐ3つの対策
筆者らの実験は、企業が取引相手に気をつける必要があることを示唆している。最終的に、自社のスタッフの行動は、取引先の行動に影響を受ける可能性が高いからだ。しかし、どうすれば自社にごまかしが伝染するのを防げるのか。伝染しないようにできるのか。次のような対策が役に立つかもしれない。
少なくとも2人組で交渉にあたらせる
別の人間の目があるだけで、交渉を行うリーダーは行動の適切性をより意識するようになり、その結果、嘘につながる衝動的な行動を押し留めることができる。
行動規範を厳格化する
たとえば、交渉役になる従業員には、半年に1度、倫理研修を受けさせる。こうした研修は、入社時に詰め込み式に1回だけ受けるケースが多いが、それを補強するのだ。また、毎月のチームミーティングで、会社の基本的な倫理原則を従業員にリマインドするよう、チームリーダーに要請してもよい。
また、交渉チームに対し、交渉後に自分たちの振る舞いを振り返り、行動規範への違反がなかったかを考えさせるのもよいだろう。交渉中の自分の態度が同僚によって検証されることがわかっていると、同僚からのプレッシャーが生まれて、行動規範の遵守が促される。
相手企業の交渉担当者を慎重に吟味する
ある程度の嘘は、交渉における駆け引きの一部とみなされるが、こうした行動がチームに伝染し、長期的な影響を与える可能性があることを考えると、極端な嘘は許すべきではない。このため、ほかの関係者の言動を記録したり、問題のある人物と行った過去のやり取りに関するメモを比較させたりするとよいだろう。
その人物が常習的なトラブルメーカーであることがわかった場合は、相手企業に理由を説明して、担当者の交代を求めてもよいだろう。その会社との取引をすっぱりやめるという選択肢もありうる。
交渉中にソフトウェアを使って、交渉担当者がトラブルメーカーかどうかを調べるという手もある。筆者らが、リンギスティック・インクワイアリー・アンド・ワードカウント(LIWC)という自動言語分析プログラムを使って交渉担当者らの言い回しを分析したところ、正直な発言は嘘の発言に比べて、分析的思考を反映する言葉(例:「わかる」「原因となる」)や信憑性を示す言葉(例:「私」や現在形の動詞)がよく使われる一方で、感情的な言葉(例:「恐れ」「幸せ」)が少なかった。
この問題を防ぐ完璧な予防策は存在しないが、本稿で示したような措置をとれば、あなたの会社は嘘の伝染効果に対して強くなれるだろう。
"Research: In Supplier Negotiations, Lying Is Contagious," HBR.org, November 14, 2022.