追加業務を断るべき時とその賢い方法
Yann Bastard
サマリー:優秀なビジネスパーソンほど、さまざまな依頼が舞い込んでくる。本人の利益にならない依頼まで受け入れてしまうと、長期的には優秀なビジネスパーソンをバーンアウトに陥れてしまう可能性があり、組織全体の不利益と... もっと見るなる。本稿では、断ることができない優秀なビジネスパーソンが、賢く依頼を断る手法を4パターン提示する。 閉じる

優秀なビジネスパーソンのキャパオーバーを防ぐ

 あなたの平均的な1週間を思い浮かべてみてほしい。1日の仕事のうち、本来の職務に該当する業務の割合はどのくらいだろう。あなたが、多くの優秀なビジネスパーソンと同じようなタイプなら、時間が経つにつれて、本来の職務以外の多くの仕事を任されるようになっているのではないだろうか。こうした追加業務のうち、あなたを疲れ果てさせるだけではなく、プロフェッショナルとしてのあなたの成長に貢献する仕事はどのくらいあるだろう。

 グレート・レジグネーション(大退職時代)やクワイエット・クイッティング、そして大規模な人員削減の結果、より少ない人手で、より多くの仕事をこなすことを求められるプロフェッショナルが増えている。組織が人手不足に陥ると、既存のスタッフに仕事があらためて割り振られることが多い。仕事の範囲が広がると、仕事への熱意や成績は一時的に高まるかもしれないが、長期的にはバーンアウト(燃え尽き症候群)をもたらし、組織の業績全般を傷つけるおそれがある。

 成績優秀なビジネスパーソンは、追加業務を任せるターゲットになりやすい。エグゼクティブコーチとしての筆者の経験では、彼らにとって、チャレンジや成長の機会を楽しむだけでなく、誰かを喜ばせたり、期待をはるかに超える結果を出したりすることで「金星」をあげたいという気持ちがモチベーションになる。

 プロジェクトマネージャーのアイリーンもその1人だ。彼女のチームは最近、人員が15%削減された。親切で、寛大で、(時には行きすぎというくらい)会社に忠実なアイリーンは、チームプレーヤーに見られたいと思うタイプで、危機的状況でも上司のストレスを軽減する助けになりたいと考えた。そこで彼女は、同僚たちが会社を辞めてから48時間以内に、3つの大きなイニシアティブを自発的に引き受けて、いわゆるキャパオーバーに陥ってしまった。自分の時間も、家族や友だちとの時間もなく、会社で生活しているかのようになり、頭の中はいつも不安の雲が漂っているような状態になった。

 組織やチームが人手不足に陥った時、助けを申し出ることは一般に間違っていない。しかし、それには正しい理由がなくてはいけない。アイリーンのように、舞い込んでくる依頼を何でも引き受けてしまいがちな人に、依頼を断るべき時と、プロらしく、そして嫌味なく断る方法を紹介する。

断るタイミング1:本来の担当職務に支障が出る

 プロダクトチームに所属しているあなたがマーケティングの手伝いを頼まれたとしよう。たちまち販促資料のチェックに多くの時間をとられて、本来の担当業務(ユーザー調査や戦略立案など)がおろそかになってしまうかもしれない。

 追加業務のために、自分の中核的な職務に集中できなくなったり、一貫して質の高い仕事をするあなたの能力が損なわれたりする場合(しかも学べることやスキル獲得という面で大きなプラスもない場合)、追加業務を断って、目の前の仕事を片付けることに集中したほうがよい。

 ただし、「申し訳ありませんが、これは私の担当業務外です」という言い方は避けることだ。さらによいのは、リレーショナルアカウント(関係説明)と呼ばれるアプローチである。つまり、その申し入れを断ることが、あなただけでなく、関係者全員にとって最善の利益になると説明するのだ。「あなたのお手伝いをすると、他の人たちを困らせることになる」と言う。より具体的には、「あなたのプロジェクトでもよい仕事ができないでしょうし、私の他の仕事にも支障が出ます」と説明する。

 研究によれば、このような言い方をすると、相手に対して思いやりがあり、良識的な人物とみなされやすい。たとえば、「お断りしなくてはいけません。マーケティング活動に時間を割くと、私たちのチームの重要なプロダクトローンチのスケジュールに遅れが出て、収益目標を達成できなくなってしまいます」と答えてみよう。